青いカン 〜岬くんと編〜
上手い具合に今日はいい天気になった。岬は起きて一番に空模様を確認し、安心した。 ――― 今度の休日はピクニックに行こうよ。岬くんの作ったお弁当が食べたいな♪ ――― 愛しいあの人のために、岬は腕によりをかけてピクニック用のお弁当を作った。 彩りも鮮やかに、栄養面も考え抜き、なおかつ彼の好物ばかり。 岬は自分の腕に満足しつつ、彼に満足してもらえそうな装いを整えて家を出た。 待ち合わせの場所に時間を違えず翼はやって来た。 「ごめん、待たせちゃったかな?」 「ううん、今来たところだよ。」 台本どおりのセリフを交わし、デートの出だしは好調だった。 「・・・翼くん・・・ずいぶんと奥まで来たみたいだけど・・・ここでいいの?」 「いいの、いいの♪今日は二人っきりになりたかったから、あんまり人に知られてない場所教えてもらったんだ♪」 ・・・嫌な予感がする・・・ 長年の付き合いからか、岬は敏感に翼の行動のおかしさに気がついていた。 ピクニックに行きたい。のはいいとして、何故こんなにも山奥に入らなければならないのか? 翼は「少し奥にはいると木々に囲まれた花畑があるのだ」と言うのだが・・・ 果たして、そこには確かに『お花畑』が・・というより多少他の場所よりは花の咲いている量の多い空間があった。 「ね?あったでしょ?」 得意満面な翼には悪いが『お花畑』には程遠い代物だと岬は思った。 しかしながら抜けるような青空がそこにはあって、薄暗い森の中からすれば格段に居心地のよさそうな場所であるのも事実だ。 「そうだね。お弁当を食べるには都合の良さそうな場所だね?」 「そう。都合のいい場所なの。」 ・・・なんだか質問がかみ合っていない気がするのは考え過ぎだろうか?・・・ 先ほどよぎった『嫌な予感』が妙に気にかかる。そんな考えを振り払うように岬は明るい声をだした。 「じゃ、食べよう。」 「うん、いただいちゃおうかな♪」 ・・・やっぱり『嫌な予感』は消えてくれなかった・・・ 岬のお弁当は期待に応えておいしく、食べ終えた翼は満足そうに腹をさすった。 「ああ、美味しかった♪ごちそうさま!」 「ふふっ。お粗末さま。」 ・・・ああ、先ほどの『嫌な予感』などはやはり気のせいだったかと岬が警戒を解いた時 「さて、デザートをいただこうかな?いや、こっちが『メイン』か・・・」 にやり。と翼が普段は絶対に見せることの無い歪んだ微笑を見せた。 ・・・!!・・・ 驚く暇もなく組み伏せられた岬はそれでも最後の抵抗を試みる。 「・・・〜〜!つ〜翼くん?じょ、冗談だよね?!だってここ『外』だよ!人がいないとは言え、『外』なんだよ〜〜!!」 「そう!俺、一度『外』でしてみたかったの。こ〜ゆ〜のね、『アオカン』って言うんだって♪なんだか『青春』に似てない?『青い春』じゃなくて『青いカン』だよ〜♪」 翼は仕入れた情報は必ず試してみたい性質だった。 ・・・〜〜!誰だ誰だ誰だ?『アオカン』なんて言葉を翼に教えたのは!?だいたいなんなんだそれは!? 「なに!なに!なんなの〜!そんなのわかんないよ〜!!・・・ふえっ・・・えぇ〜〜ん!!」 とうとう岬は泣き出してしまった。 「岬くん。よしよし、そんなに泣かないで〜。俺いじめてるみたいじゃない〜・・・」 「いじめてるじゃないか!だいたい誰だよ!こんなこと教えたの!・・ふえ〜ん・・」 「ん〜・・若林くんだよ。ちなみにこの場所を教えてくれたのも彼。ここ若林くん家の山なんだ。」 ・・・若林っ!あの若年寄め!憤慨しながらも岬は混乱した頭で一生懸命この状態を脱する方法を考えようとした。 「も、もしかしたら、若林くんがどこかから覗いてるかもしれないじゃないか!きっとここに来るだろうって・・!」 「うう〜ん?気がつかない?」 「えっ?」 「いるじゃない、そこに。」 「えっ?ええぇぇえぇ〜〜っっ!?」 「なぁ〜んだ、バレてたか?」 翼の指差した方向の木の陰からビデオカメラを廻しつつ若林がひょっこりと顔を出した。 「なっ・・!なななな何してんだよぉおぉぉ〜〜!!」 「ビデオ撮影でぇ〜すvv」 「若林くん、後で見せてねv」 「OK、OK。」 ・・・なんて会話をしてるんだぁあぁ!変態っ!変態!変態っっ!!うわぁぁあぁあぁ〜〜!!このままじゃヤられてしまう〜!その上『ビデオ撮影』までぇ〜〜(泣) 岬は半狂乱になりながらも必死で翼の弱みを探し出した。 「翼くんっっ!!もし、もしもこのままシたら!三杉くんに言いつけるよっっ!!」 「ええっ!?三杉くんにぃ〜〜?・・・」 「そうだよっ!「翼くんが刺激が足りなくて欲求不満がたまってるから思いっきり可愛がってあげて」って!」 「ううっ(冷や汗)」 「『アオカン』で『ビデオ撮影』がお好みだ。なんて言ってあげたらさぞ喜ぶだろうね?三杉くんのことだから撮影隊を引き連れて来てくれるかもよ?」 「ううっ・・・・」 翼は唸って黙り込んだ。しばらく俯いて考えていたかと思うと突然顔を上げ、振り返って呼びかけた。 「・・・三杉くん・・・いるんでしょ?・・・」 「やぁ。気付かれてしまったかい?」 「・・・俺が三杉くんの気配に気がつかないとでも思ってた?」 「まぁね。無理だとは思ってたけど。夢中になってたら大丈夫かな?と。岬くんのこととなると周りが見えなくなるだろう?君は。」 ・・・怖い。二人の会話も怖かったが、翼が周りが見えなくなるほど自分に執着しているという事実がもっと怖かった。 ・・・怖い。この先僕は無事でいられるのかしら?(涙) 「ところで三杉くんもビデオ持参のようだけど?」 「ああ、これかい?今日は家庭用のビデオだけれど、後日の撮影にはちゃんとしたカメラを用意するよ。もちろんプロに撮影させるしねv」 「それって・・・」 「もちろん、『君と僕』との撮影だよ?あ、撮影会を開こうか?誰を招待しようかな?希望ある?翼くん?」 「・・・・・・・」 「ほらっ!翼くん!僕においたをしようとするからだよ!嫌でしょ?ね?だからもうこ〜ゆ〜ことはやめよう!ね?ね〜?!(懇願)」 翼に考える暇を与えてはいけない。「みんなで撮影会もいいね。」なんて考えに行き着いたら翼と自分のビデオまで公開されてしまうのは目に見えていた。 「・・・む〜。やめる〜・・・」 ぷぅっとむくれながらも諦めてくれたようだ。 「翼くんが嫌ならしかたない。僕も諦めるよ。・・でもおいたのお仕置きはしなくちゃね?そんなに欲求不満なら、今日は『ホテルで泊まりでヤり放題♪』コースだね?」 「・・・ヤ・・・ヤり・・・?」×3 「さぁ、帰ろうか?翼くん。」 翼は三杉にかかえ上げられて連れて行かれてしまった。最後に岬に恐ろしい呪いの言葉を吐いて 「うにゃ〜・・岬く〜ん。かわりに今度俺たちも『ヤり放題♪』コースね〜?」 ・・・怖い!今日は逃れられたけど・・・今度はどうやって逃げたらいいんだぁ〜??(大泣き) 岬が恐怖に恐れおののいていると背後から若林の呑気な言葉が降ってきた。 「さぁ〜てぇ〜。俺たちも『ホテルで泊まりでヤり放題♪』コースと行きますかぁ〜?」 ばっし〜〜ん!岬の平手が舞った。 「馬鹿!バカばか馬鹿!なにが『ヤり放題♪』だ〜〜っ!!見てたんならなんで止めてくれないんだよ!ビデオまで持って!変態っ!!」 ボカボカボカ☆岬はめちゃめちゃに若林を殴りつける。 「いて!痛てててて!ごめん、ごめん。悪かったって・・岬!痛てててて!」 「こんな変態なんかとはもう別れてやるぅ!うわ〜ん!!もう一生禁欲してろぉ〜〜!!」 「ええっ!?わわわ、ごめん、岬。悪かった、謝るから許してくれ!」 「うるさい!変態!あっち行っちゃえ〜!!」 「岬ぃ〜〜・・・」 この後、若林はこの場を納めるのに3時間。さらにお許しをもらえるまで三ヶ月間かかった。ありとあらゆる手段と労力を費やして。・・・しかも禁欲。 「・・・岬さん。もう我慢の限界です・・・」 さすがの岬くんも餓えた野獣と化した森の熊さんには敵いませんでした、とさ。 END |
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言い訳
・・・こんな翼と三杉と若林は嫌だ・・・岬くん、ごめんねぇ。いっつも酷い目に会わせて・・・だって楽しいんだもん♪(←こんな千ちゃんが一番嫌だ 笑)
コメント:相変わらずはじけてますねぇvvナイスです。
そして、ささっこは、また一つ勉強になりました!
それにしても、こいつら・・・・凄い。(ありとあるゆる意味で・・・)