ゾロの苦悩




「好きだ。」

そう呟いてから、しまったと口を押さえるが後の祭り。
驚いたまま固まってしまった相手の顔を覗きこめば、息はしていた。どうやらショック死は免れたらしい。
ホッとすると同時に、どう弁解しようか、いや、弁解というのも・・・・、と顎を手に考えていたら、言われた本人が正気に戻ったらしく肩に手を置かれた。
何だ?と声にすることもなく、唇に温かいものが触れた。

今度は逆に驚いていると、先ほどは固まって、今度は仕掛けてきたこの船の凶悪なコック、サンジがはにかんでポツリと「俺も・・・。」と答えた。
自分がショック死するかと、ゾロは慌てて深呼吸をした。











決して叶う事の無い想いだと思っていたのが、それが棚から牡丹餅状態で、「俺もお前が好きだ。」と言われた。
これは二度とない奇跡だ。いや、二度と無かったらサンジが奇跡の海を見つけられない!!と妙なことまで考えてしまう自分はそうとういかれていると思う。
が、とにもかくにもお互いの気持ちは通じ合ったのだ。
とくれば、次の段階は、身体・・・・だ。
正直、ゾロはサンジのあの白い肌を見た瞬間から、煩悩鳳を打ちっぱなしだ。しかも、自分に対して108どころではないほどに打ちっぱなしだ。自分を滅多刺し状態だ。
そんな自分への攻撃にも負けずに、やはりサンジを抱きたいという欲望は捨てきれず。
これまたポロッと呟いてしまった。

「てめぇを抱きたい。」

今度も慌てて口を押さえるがやはり後の祭りだった。
目を真ん丸くしていた。しかも、いつもは片方しか見えない目が両方見えそうな勢いで丸くしてゾロを見つめていた。
この驚きはあれか?
いくら自分に惚れている宣言したからと言って、元来の病気とも言える女好きが早々治るわけではない。
「冗談ではない!!」とコリエシュートを決められるのは必至か?いやはや、コンカッセかもしれない。
そりゃそうだ。
「抱きたい。」と言われたということは、言われた方が抱かれるのだ。当たり前だが。
ということは、サンジが所謂女の子の立場になるということで・・・。

レディを守るという王子様(アホ王国の)が女の子の役をするわけがない。
どう考えたってありえない。グランドラインの海水が干上がるほどにありえない。

そう悟った瞬間、ゾロは青ざめた。

と、言う事は自分が女役なのか?
俺が抱かれる立場なのか?
サンジに抱かれてアンアン言うのか?
善がってサンジに向かって脚を広げて、もっと、と強請るのか?

それもグランドラインの海水が全ての島を飲み込む高さに上昇するほどにありえない。
自分の方が、サンジを抱きたいと思ったのだ。
抱かれたいと思ったことなど一度もない!

そう気が付いて、ゾロは困ってしまった。
サンジが抱かれるはずがない。
かといって、自分は抱かれたくない。

だったら、どうする???

悶々と腕を組み、悩みだしたゾロにサンジは大きなため息を吐いた。

ポンと肩に手が置かれた。

「どうした?」と声を掛ける前にはにかんだサンジが目に入った。
この展開は・・・?!

「俺、経験あるから・・・・抱かれてもいいぜ?」

頬を赤らめゾロを見つめる瞳は真剣そのものだった。
嘘を言っているわけでも無理をしている風にも見えなかった。

と、いうことは・・・。


サンジは本当に男に抱かれたことがあるのか!!!


またまたショック死するかと思った。
はーはー息をするが間に合わず、深呼吸を何度もするが間に合わず。
何故か、腕立て伏せをしだしてしまった。

突然の行動にサンジが慌てる。

「おいおい、どうしたゾロ?俺を抱きたいんじゃなかったのか??」

そんなこと言うな〜〜〜〜と。ゾロは大声で叫びたかった。元々は自分が言い出したのが原因だということも忘れて。
それでもサンジを抱きたいという欲望には勝てず、とは言え、もはや口に出すことも出来ず、コクコクと首を縦に振るしか出来なかった。
そんなゾロの様子にサンジは満足して微笑む。
サンジの微笑みを見て、あぁ、可愛いな〜と脂下がる鼻の下を引き締めて、ゾロは徐にサンジの手を取った。

「おい、どうした、ゾロ?」

質問には答えずにサンジの手を取ったままラウンジを飛び出した。
そのまま、格納庫へと脚を急がせる。


どんな過去があるにせよ、今サンジは俺のものだ。
あの魚の船でどれだけ男の欲望を受けてきたのかわからないが、小さい時からいたというには大人達に騙されたのだ。だから、サンジの心は清いままだ。身体は汚れても心は穢されていない!
過去よりも未来だ。俺とのこれからの方が大事だ。
ずっとずっと離さないぜ。
俺の●●●に惚れさせてやる。
他の男にはもはや目移りできないほどの大物(?)を見せてやる。
経験よりも大きさだ!!

もはや訳のわからなくなっているゾロの脳内を知るよしもなく、さっさと脚を運ぶゾロに、サンジは「あぁ、ゾロに抱かれるのか。」と大人しくついていった。


格納庫に入るや否やゾロはキスを仕掛けた。
と、同時にサンジもそれに答えながら、己の服に手を掛けた。
「経験があるから抱かれる」とはいえ、サンジに主導権を渡すのは攻める側からしてもゾロの襟持(?)からしても許してなるものか、とゾロは思っているので、サンジに負けじと勢いよく服を脱ぎ捨てた。

そういえば、とゾロは思い出す。

男同士って、滑りが悪いからってよく潤滑油なんかを使うと耳にしたことがあるが、それはいらないのか?
サンジは経験豊富(いつの間にか、豊富になっている)だからそんなものはいらないのか?もしかしてそれだけ緩いのか?(それは困った)
それとも油なんかを必要としないほどの激しいのかいいのか?(それはそれで萌えるが)

そんな脳内で混乱をしているゾロを尻目にサンジがゾロの首に腕を回してきた。
もう一度唇を合わせる。
トロリと溶けてしまいそうなほどの口付け。
薄く目を開けてサンジを伺い見ればトロンとした表情をしていた。
あぁ、この顔に多くの男が骨抜きになったのかと思うと腹が立ったが過去のことは今更どうしようもない。
これからは、己だけがこの美しく妖しい顔を見ればいいのだ。
怒りをなんとか腹の中に納めて、サンジの腰に腕を回した。
ギュッと身体を密着させると二人の身体の間でお互いの欲が兆しているのがわかった。
せめてこれぐらいは自分から仕掛けよう、と僅かな隙間を作り、サンジが兆したものに手を掛けようとしたらそれを腕を取って止められた。

まさか、これもサンジからしてくれるのか?
とゾロが真っ赤になってサンジの動向を伺っているとサンジがゾロを見上げてニコリと笑った。

「な?撫でてくれよ。」

やっぱり俺が擦るのかぁ??

そう、思い、再度手を伸ばそうとしたら、掴まれた腕はサンジの頭の上へと導かれた。

はい??

不思議そうな顔でサンジの顔を眺めれば。

「な、ゾロ。抱きしめてくれるんだろう?だから撫でてくれよ。」

そう言って、ゾロの手をサンジの頭を撫でるように動かした。

はい?・・・はい?

「おい・・・・クソコック・・・?」

「毎日、こうやって抱いてくれな?」

天使の微笑みで言うのはどうしたことか?
さっきの妖艶な笑みはゾロの幻想か?

「あの〜〜〜〜〜。これは、どうするんだ???」

目線でブツを指し示してどうにかしてくれ!と訴えている凶悪にまで膨らんでいる欲望をサンジに見せる。
それを見ても動揺もせずにクソコックは答えた。

「あぁ、寝ているうちに収まるだろう?出したかったら風呂でもトイレでも好きな方で処理して来い。」

はい・・?はい・・?はい・・?

?を繰り返すゾロの存在を忘れてしまったかのように、サンジはそのまま眠りについてしまった。
眠りつく前に足元にあった毛布を掛けることは忘れずに。

ちょっと待てやぁ!!!!!!!

大声で叫びたかったが、すでに夢の向こうの世界へと行ってしまったサンジには届くべくもなった。


抱くって・・・・・。抱きしめて寝ることなのかぁぁ!!!!!!
しかも、裸で????
×××や、●●●をしないで??




どんな男所帯だぁ!!!!!あそこはぁぁぁぁぁぁ!!!!!!








むさ苦しい男所帯の中で、サンジは天使のように大事に扱われていたとか。
裸で寝るのは体温が高い子ども時代だったから、その方が寝やすかったとか。


何も知らない魔獣はただただサンジに促されるままにサンジの頭を撫でながら抱きしめて。

疑問だらけだが、もはや何も聞けるゾロではなかった。




END




06.09.17.

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うちの子はパンツ一丁で寝ます。