ゾロの苦悩2




悶々とゾロは考えた。

どうしてだ?どうしてこうなった?


数日前のことだ。

ゾロはサンジのことが好きで、サンジもゾロのことが好きだと知った。
お互いに好き同士だとわかり、では・・・・・、と、いよいよサンジを抱けると喜々としてサンジと格納庫へとシけこんだ。
だが・・・・・・、サンジの育ったおかしな環境(?)の所為で、抱きしめて寝ることしかできなかった。しかも、サンジの頭を撫でながら。(それはそれで嬉しいのだが)

「抱く」=「抱きしめて寝る」の方程式がどうしても繋がらない。おかしいだろう?どう考えても可笑しい(字が違った)だろう?
もう一度一年生から勉強し直して来い。日本語?英語?ノースブルー語?をやり直せ!とゾロは叫びたかった。自分も文法は苦手だが、そういったレベルではない!とゾロは思う。


結局、ゾロはサンジを抱くことを・・・、自慢の宝刀を披露することもできなかった。
一瞥されただけだ。あれだけのモノなのに!女性が泣いて喜ぶほどの大物なのに。
一瞥たぁ、どういことだ!!(怒)サンジはそこまで太剣ではないのに。(いや、生まれの地域からすれば長剣の部類か?)
それとも、魚の船の店員達はみな剛剣か?(それは許されん!怒怒)って、剛か柔かは、使わないとわからないだろうが!!
サンジは潔癖なのだ。前(たぶん)も、後(こちらは確実だ)も・・・。
それはわかって狂喜乱舞はしたのだが。



どうしてくれよう。
どうしたらサンジを抱けるのだ?






持っている錘にピシピシとヒビが入るほどに握り締めて、今日もゾロは鍛錬に勤しんでいた。(そして、悩んでいた。)

当のサンジはいつもと変わらず、女性陣にメロリンしながら、デザートを運んでいる。

「ナミさ〜〜〜〜〜〜ん、ロビンちゃ〜〜〜〜〜ん。今日のデザートはシンプルにマドレーヌですよぉぉvv」

遠目に見ていたら、女性陣にデザートを渡した後、男共には顎でおやつの置き場所を教えただけだった。相変わらず女尊男卑は健在だ。
と、思っていたら、こちらに足が向いた。
どうやら、鍛錬しているのを見越して、サンジがゾロの分のおやつを持ってきてくれるらしい。ナミ達に向かうほどではないが、足音が軽快なのは、サンジとしても自分を想っている証拠と考えると自然とゾロの頬が緩んだ。
が・・・。

「ほらよ。おやつ・・・。」

さり気なく脇に置かれた皿とセリフに、顔を向ける。
コトンと置かれた皿には、ナミ達に渡されたものと違うものがのっていた。

「おやつ、他のやつとは違うような気がするが、俺の気のせいか?」

どういう意味で他のメンバーと違うのかがわからずに聞いてみる。
お前は特別だよvvの意味合いなのか?それとも、作りたてのおやつはみんなの分で終わりで、ゾロの分は残りものだ、クソヤロウ!の意味で違うのか。
ゾロとしては、当然「貴方の為に特別に作った別メニューなのよvv堪能してねvv」の意味として受け取りたい。

が、現実はそう甘くなく。
サンジは煙草に火をつけながら目線を寄越した。

「あぁ、それな・・。材料の残り分の関係で男供は、餅なんだよ、焼餅。甘いお菓子はレディ優先v」

焼餅・・・。
確かに目の前の皿に置かれているのは、焼餅だが・・・。

なんだかがっくりきた。
いや、餅が嫌いなわけではない、とゾロは自分に言い訳する。
仕方がないのだ、材料の関係だというからには、それなりの事情があるのだろう、コックとしては。なにせこの船には大喰らいの船長が毎晩のように食糧荒しをしている。それに対抗してゴ〇ブリほいほいなる船長ほ〇ほいなどをウソップに作成してもらい、奮闘している。が、その作成者のウソップも時々食糧荒しに加担しているので、泥棒に鍵を作ってもらっているようなものだ。効く訳が無い。
でも・・・・。
ゾロの目は楽しそうに紅茶などを啜り、甘いお菓子を口にしている麗しい(?)女性陣供に移る。

焼餅って・・・、俺の方が餅を焼けそうだ。ヘソで茶は沸かさないが、変わりにヘソで餅を焼けそうなほどだ。どうだ、腹に餅を乗せてみろ!と言いたいぐらいだ。
酒飲みだから甘いのは嫌いと思われがちだが、こう見えても意外に甘いのも大好きなのだ。血糖値を気にするほどではないが、疲れた筋肉には甘い食べ物は必要なのだ、とゾロは思う。(疲れた頭に、の間違いには気が付いていないが)
ちょっとぐらい、あの甘いマドレーさんを食べてみたい、とゾロは思った。
柔らかそうだ。パクンと口にしたとたん、甘さが口に広がりそうだ。と思う。サンジを食べてみたら、こうも甘いんだ、蕩けそう、一緒だねvvと思うほどに甘いだろう。(ゾロの方が、甘くて吐きそうなのは、わかっていないのだが)
でも、仕方がない。
餅は腹持ちがいいから、いくらでも食べる男連中を考慮しているのだろう、と考え改めて皿を手に座った。


焼餅を食べながら、ゾロは改めて考えた。
錘を横に置き、後甲板で正座して、茶を啜りながら、焼餅を大事に大事に食べながら、再度考える。




ナミとロビンに対しての態度は・・・・、まぁ、あれはいつものことだから仕方ねぇが・・・、とため息を溢した。
それでも気持ちは繋がったはずなのだ。自分にも、それなりに接して欲しいとゾロは思う。いや、普段が普段なだけに、二人だけの時ぐらい・・・・、と考え巡り。
結局のところ、辿り着く結論はやはり究極の関係、合体だ!!(できれば、某魚釣り映画の〇ちゃんよりも太字で!)

実は、『抱きしめて寝た』次の日、勇気を出して聞いてみた。「お前はセックスと言う言葉を知らないのか?」と。
そしたら、「知っているに決まっているだろう」と、笑い飛ばされた。
セックスとは女性と子どもを作るためにするもの。ましてやたったひとり巡り会った相手と結婚してからするもの。という、古いと言われそうな考えを意外なことにサンジが実はもっていたりした。
とりあえず、セックスを知っていることにホッとする。そして、ゾロも育った環境は地方の方だから、その考えに賛同できないことはない。

「お前が、生涯たった一人きりの相手だ。」

そして、そう断言したゾロにサンジは顔を赤らめた。
だが、男性同士はセックスをする必要なしと考えていたらしく、コックは、挿入まではしない。擦りあいで終わり。と言うので、結局サンジとは生涯の相とを思って心は結ばれても、身体は一生結ばれないままである。
もちろん、ゾロだって身体目当てではないのだが、それでも血気盛ん(?)なお年頃としては、モンモンとするのも事実だし、好きな相手と結ばれたいと思うのは、自然の成り行きだろう?と思っている。

サンジは、そうは思はないのか?とゾロは不思議でならない。





トレーを手にラウンジへと帰っていく小さなお尻を見て、焼餅を煎餅なみに握り潰した。
いつまででも、子どものように抱き合って寝るだけでは我慢できない。
思わずゾロは声を掛けた。

「おい、コック!」

階段を降りている最中だったので既に尻は見えなくなり、頭の先しか見えなかったので、床から生首が生えた位置で、サンジは振り返った。

「どうした、ゾロ。餅だけじゃあ足りないか?・・・・夕食はもうちっと豪華にしてやるから、今はそれだけで勘弁な?」

手を合わせて詫びているのだろうが、手は見えない。が、可愛らしくおねだり顔は、ちょっと嬉しいvv
と、そうじゃなく!と頭をブンブン振った。

「いや、おやつはこれでいい・・・。そうじゃなくて・・・・・・今夜、二人きりで話がしたい・・・。」
「・・・・・?いいけど?まぁ、朝の仕込みの後でいいか?」
「あぁ・・・。」

サンジは皆が寝てから、夜中に一人で次の日の朝食の為に仕込みをしているのを知っている。
あれから時々、抱き合って寝る日もあるので、仕込みをする背中を見ながら酒を飲むこともたまにあるのだ。
そして、いつも『抱き合って寝る』だけで終わってしまうのだが。


今日こそは・・・・・!!!!!


ぐぐぐと拳を握るゾロの手の中の煎餅を練り餅にしながら、ゾロは作戦も練るのだった。












「・・・・・・で?」
「だから、そう今も言ったろう?お前とセックスしてぇ・・・。」

何度も何度も考えた作戦は結局、作戦にはならなかった。ゾロだから。
ただただゾロは素直に気持ちを言葉にした。が、それは、口で負けるのはいつものことなので功を成さないのは予想できたことなのに、その方法しか思いつかなかった。
でも、俺の気持ちは伝わるだろう?とゾロは思う。

「俺も言ったろう?男同士は、セックスしないもんだ。」
「おかしいだろうが、それは!」
「どうして?」
「セックスってぇのは、好きなものどうしがスることじゃないのか?」
「いや、そうでもあるが、それは男女で結婚してからするものだ。子どもを作るためのものだ。」

何処の教科書にあるんだよ、そんなのは!!

ゾロは、ガクリと頭を垂れる。

「まったく、てめぇも困ったヤツだなぁ・・・。ちゃんとした知識は魔獣にも必要だぜ?俺がきちんと教授してやる。」

いや、教授したいのは、こっちだ。

というゾロの思考を無視して(当然。)サンジは徐に立ち上がった。

「何処へ行く?」
「ちょっと待ってろ、すぐに戻ってくる。」

そういい残して、部屋を出て行ったと思ったらすぐに戻ってきた。その手には、見慣れぬ本が持たされていた。何処に仕舞われていたのだろうか。タンスの奥?
手にしていたハードカバーのその本を机に置き、サンジはゾロの横に座った。

「・・・・・・?」
「俺の13歳の誕生日にジジィがくれた本だ。これで勉強しろ!ってな。」

テーブルの上に置かれたそれは、まさに保健体育の教科書ならぬ『赤ちゃんが生まれるまで』の本だった。
ってぇか、裏表紙には対象年齢まで書かれている。ってか、4〜6才向って何なんだ!!

固まってしまったゾロにサンジが本を差し出して、ペラリとページを捲った。
そこには、簡略化された絵でお母さんだろう女性のお腹の中に赤ちゃんが描かれていた。

「・・・・・・・・。」
「ほら、お母さんの子宮の中に赤ちゃんができるだろう、セックスすると・・・。俺はレディじゃないから、子宮はねぇ。」

サンジに子宮がないのは当たり前だ!っていうか、その本にはセックスという言葉はない、どういった経由で知識を得たのか、まったくわからねぇ。
あぁ、そうかその前のページは男の人のおちんちんが描いてあったりするのだろうな、と思うとさらに頭が垂れる。

ゾロは頭を抱えた。

「お前、本当にクソコックだなぁ〜〜。」
「なんだと!」

ため息を吐きながら呟いたゾロの言葉にサンジが反応する。
が、ゾロはまぁまぁと嗜める。怒る気もケンカをする元気も、ましてやセックスになだれ込もうとした気力も失せた。





結局、その日、ゾロとサンジの関係は多少、進展した。

クラスが違った恋人と漸く一緒のクラスになれましたvvしかも、一緒に徹夜で勉強しちゃいました〜、これでテストは完璧!嬉しいわvv程度に・・・。

一晩延々と保健体育の授業よろしく、赤ちゃんのできるまでを教科書(4〜6歳向)付きで勉強した。サンジ先生の指導の下。
ゾロもこうしてきちんとした正しい知識を得ることができた。テストは満点だ!(何のテストだ?)
・・・・ゾロはそれを望んでいたわけじゃないけど。



早朝、ゾロは寝不足の頭を机に転がして、誓った。



今度は、正しくない知識をサンジに教授してやろう!!
それよりも、いつかイーストブルーに帰ったら魚のレストランを襲撃してやろう!!



END




06.11.13.

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前回、ゾロが可哀想だったので、なんとかしてあげようとして失敗・・・。