仲間のために




まだ深夜とは言いがたい時間帯のメリー号。
碇を下ろし、静かに夜を過しているだろうと思われたのだが、実際、男部屋では、青春真っ只中の連中が女性陣には聞かせられない話題で盛り上がっていた。
部屋の中央で、裸の女性が写った雑誌を手にルフィとウソップが騒いでいる。

そもそもの切欠は、何を思ったのか、ルフィが「偶にはナミ達のように読書でもしてみるか!」と言い出したことだった。
丁度、島に着き、上陸する際に貰った小遣いで本を買うことにした。が、もとより文字をずっと読み続ける根気はない。
「まずは、字の少ないのからがいいぞ。」と自らも文字の多い本を読み続ける気力が続かないウソップが適当に選んだ雑誌を買ってきた。
と、何気に気が付けば、雑誌に袋綴じになっているページがあった。
なんだなんだ?と二人して、そこを切り開いてみれば、そこには桃源郷なる神秘の世界、女性の裸が写っていた。しかも数ページに渡って。

「うおおおぅぅぅっ!すげぇ、ウソップ、この女、乳がでけぇ!!」
「待て待てルフィ!こっちの女性の尻の形も芸術的な魅力がある。そこは外せないぞ!」

実際、過去ナミの裸を見たことがあるはずなのだが、女性の裸を見るのは始めてといわんばかりの興奮ぶりに、離れた位置で目を瞑っていたゾロが声を掛けた。

「うるせぇ、いちいち女の裸で騒ぐな・・・。」
「ゾロも見てみろよ!すげぇぞ、この女の乳、でけぇぞ。ナミよりでけぇ・・・!」

ナミという名前にすばやく、サンジが反応する。

「おいっ、ルフィ!なんてこと言いやがんだ。ナミさんをそういった目で見るな!」

サンジのナミ崇拝は相変わらずだ。

「何言ってやがる、くそコック。アイツだって女だ。この写真もナミも一緒じゃねぇか!」

ゾロの言う事に「そうだ、そうだ!」と、ルフィとウソップも頷いている。
ああだこうだと女性の身体のことで意見がぶつかりあう。
あまり大声で騒ぐと隣の部屋にいるナミ達に聞こえてしまうので、そこは極力声を抑えて叫ぶ。
ルフィ達がいる男部屋とナミ達がいる女部屋は壁一枚を隔てて隣りなのだ。そう、壁一枚は、結構侮れない。
普通に会話している分には聞こえないようにしっかりと作られているが、何分声がでかい連中ばかりだ。時々、「うるさい!」と隣から、逆に大声で怒鳴られる事がある。
要注意だ。

「何言ってやがる。アホ剣士が!女性をもっと敬え!女性は素晴らしいんだぞ。お前みたいな魔獣にはわからんだろうがな・・・。」
「アホか・・・。」

ゾロの呟きにサンジが「あ"ぁん!!」と額に青筋を立てる。

「わかってねぇのは、サンジだ。女の乳は抱くときに揉む為にあるんだぞ。アソコだってセックスするのに必要だからあるんじゃねぇか。」

ケンカ突入とばかりに額を併せる二人だったが、ルフィの一言で動きが止まった。

「ルフィ・・・。」
「てめぇの口からそんな言葉がでるとは思わなかった・・・。」

意外という顔で同時にルフィを見つめるゾロとサンジに、ルフィは言葉と対照的な笑顔で続ける。

「何言ってんだ、二人とも。俺だって男だ。女を抱きたい時もあるぞ!青春だな!」
「てめぇの青春ってどんな意味だよ。」

思わず脱力するサンジに対して、ゾロはルフィに共感する。

「そうだな、ルフィ・・・。忘れてたぜ、てめぇだって男だもんな。溜まったもんは吐き出してぇよな?」
「もちろんだ、ゾロもだろ?」
「俺は島に降りた時にきちんと出してんぜ?お前は吐き出してねぇのか?」
「あ〜〜〜、俺はオナニーばっかだな・・・。セックスしたことねぇな・・・・。してみてぇなぁ〜〜。」

上目遣いにぼおっとするルフィに、ゾロがニタリとして耳打ちする。

「じゃあ、ナミにでも頼んでみたらどうだ?アイツなら犯らしてくれるかもしれねぇぜ?」
「ナミかぁ〜〜〜〜〜。」

ルフィがどう処理するか答える前に、サンジがやはりまたナミの名前に反応する。

「こらあっっ!!なんてこと言いやがんだ!!ぜってぇナミさんに手出すなよ!」

突如怒り出したサンジに、ゾロはニヤリと笑って挑発するようにルフィを煽る。

「結構あいつも昔から海賊相手に商売してたんだろう?ってことは、それなりのこともあったはずだ。だったら犯らしてくれるんじゃねぇのか?ま、高いかもしれんがな・・・。」
「高いのかぁ・・・。困ったなぁ。宝払いじゃダメかなぁ〜〜。」

う〜〜〜ん。と唸ったルフィの横で、どう対応していいのかわからなくなって固まってしまったウソップにもゾロは発破をかける。

「おい、ウソップ。お前もどうだ?」
「いっ。俺ぇ?」

ゾロとしては、別に本当に仲間である女性陣をそういった対象として扱うつもりはない。それは仲間の大して失礼だとはわかってる。
ただ、単にサンジがあまりにも過敏に反応するのが、おもしろいので挑発しているだけだ。

いつもいつもサンジの女性に対する態度が気に入らないだけなのだ。女性崇拝、ナミ崇拝もどこまでいきゃあ気が済むんだ。と思う。


ちょうどいい機会だ。ナミもロビンもそこらにいる女となんら変わらないことを教え込んでやる。


ふん、と鼻で息を吐いてサンジを見ると真っ赤な顔をしてサンジが憤っていた。想像通りと言うところだろうか。

「おい!!ウソップもルフィも、ナミさんやロビンちゃんに失礼なことをしてみろ!一週間メシ抜きじゃすまねぇぞ!!ってか、失礼なことを言うんじゃねぇ!!」

サンジの頭から湯気が出そうな勢いだ。

「おい、あほコック。何言ってやがる。長い船旅じゃ、処理に困るだろうが!別にいいじゃねぇか、減るもんじゃねぇし・・・。」
「減るもんなんだよ!っていうか、穢れる!!」
「あほか・・・。」
「なんだとぉ!!」
「だったらてめぇはどうしてんだよ!!それとも何か?童貞くんかよ?!」
「んなわけねぇ!!」

ギリギリと歯軋りして睨みあう二人に、おもしろくなった、と「ヤレヤレ!!」とルフィが騒ぎ立てた。ウソップも自分に害が及ばないと判断したのか、一緒になって囃し立てだした。
胸倉を掴んで声を荒げていく。
徐々にヒートアップしていく二人に、やはり騒ぎ声が隣りへ届いたのか、、女性陣への部屋との境になっている壁から”ダン!!”と音が聞こえた。
と、同時に緊急用に作られている扉がバタン!と開く。

ルフィ、ウソップ、ゾロ、サンジ。四人ともそろって開いた扉に注目した。


そこには額に青筋を立てたナミと怪しげな笑みを湛えたロビンが顔を並べていた。

「ルフィ〜。」
「お・・・・・おぅ。」

青筋を立てたままナミが口端を上げる。

「あんたの相手をしてあげてもいいけど・・・。高いわよぉ。そうね・・・・。一億ベリーだったら考えてもいいわ?」
「え〜〜っ!」

ルフィが真っ青になる。

「ウソップぅ?」
「うっ・・・。」

ナミは次にウソップを見た。

「何だったら、彼女に伝えておくわ。ウソップが女性を弄んだってね。カヤだっけ、あの娘の名前・・・。」
「あ・・・・、いや・・・・・その・・・・・・・。すみません・・・・。」

俺は何もしてないのにぃ・・・。とボソボソとウソップは青い顔で呟いた。

「ゾロぉ〜。」
「いっ!」

ナミの目が細められた。

「これ以上騒ぐと、上陸したときのお小遣い、減るわよぉ。それとも借金増やす?」
「あ・・・・。それだけは・・・・。」

さっきまでの勢いはどこへやら、ゾロまで顔が青くなった。

「サンジくん?」
「はいっ!」

ナミは今度はニッコリと天使の笑みを溢した。

「嬉しいわ。私達を大事にしてくれて・・・。」
「そりゃあ、もちろん!!」

サンジはくねくねしながら、両手を擦った。

「じゃあ、私達の変わりによろしくね!」
「へ・・・・?何が?」

意味がわからずキョトンとする。

「だから、よくある話じゃない。航海が長い場合の男性の処理方法。バラティエでもあったんじゃない?」

ナミの意図することがわからないのか、ルフィが「どういうことだ?」と聞いてきた。

「ルフィも聞いたことない?男性同士でセックスするのよ。サンジくんのいた職場、女性いなかったじゃない。だからサンジくん、そういったこと、詳しいと思うわ。セックスしたいんでしょう?折角だから実技体験させてもらったら?」
「私がいた海賊船でも多かったわ、そういった人達。みんな良さそうにしてたし、さして難しいことじゃないわよ。」
「あ〜、なるほど。そりゃいいな。」

ナミの提案にロビンが後付けをして、ルフィがそれに納得した、とポンと手を叩いた。

「ちょ・・・!!待って、ナミさんっっ!俺ぁ、別にそういったことバラティエでは・・・!!」
「あれだけ男ばかりいて、島から離れている船で、何もなかったってことはないと思うわ?ゾロが、私が「海賊相手に商売をしていたからそれなりのことがあったはずだ。」っていうぐらいには。」

サンジが慌てて訂正しようとするが、誰もがナミの言葉に納得してしまった。

「ルフィ。サンジくんに教えてもらいなさいよ、セックス。きっと、頻繁に女性に声掛けるだけあって上手いと思うわよ。」
「そうだな〜。そうしよう!」
「ウソップ。相手が男ならカヤも文句言わないと思うわ?」
「・・・・・・・・・そうか?」
「ゾロ。あんたも溜まったらサンジくんに相手してもらいなさいよ。タダよ。」
「タダ・・・・・。」

誰もがサンジを見つめる。
サンジは汗をダラダラと掻いて、ナミに縋った。

「ナミさん・・・・・。頼むからこいつらに変なことを吹き込まないで・・・・。」

お願いのポーズでナミを見上げる。

「あら?サンジくん。サンジくんって仲間思いじゃないの・・・。仲間のためよ!」
「え〜〜〜〜〜っ!!」

更に汗をどっと吹き出すサンジに、ロビンがひらりと手を咲かせた。

「大丈夫よ。みんな仲間思いの人達ばかりじゃない。きっと痛い思いはさせないと思うわ。気持ち良いわよ?」
「・・・・・・・・・!!」
「じゃ、おやすみなさい。なるべく静かにやってね。」

パタンと扉をしめて、あっけなくナミとロビンの姿は消えた。
サンジを壁に貼り付けているロビンの手は残して。








「いいの?あんなこと。」
「いいのよ。あいつら、誰もそんなに深く考えない奴らばかりだから。気持ちよければそれでいいのよ。」
「これで多少は静かになるかしら?」
「サンジくんのことだから、そういうことになっても大声出さないわよ。私達に聞こえたら困るだろうから。でも、煩くなるようだったら、また対策考えるわ。」
「そうね・・・。そう大騒ぎになるような内容じゃないだろうから、とりあえずは大丈夫かしらね。」







ロビンの手によって壁に貼り付けられたサンジは、口をパクパクさせるばかりだった。
ナミとロビンによって挑発された三人が揃ってジリジリとにじり寄っていく。






「いや〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!!!」

サンジの悲鳴は、ナミ達に聞こえたとか聞こえなかったとか。
















「平和だな・・・・。」

不寝番のチョッパーは綺麗な星空を見上げながら呟いていた。







END

08.09.09




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下品ですみませんm(__)mまぁ、こんなのもありかと・・・。