集中力?




「痛っ!」
グキッと音がしたような気がした。
と、ともにわき腹に激痛が走るが、慌てていたために、さほど顔に出さずにすんだ。
同時にキャッチングしたボールを素早い動きで遠くでそれを待っていた翼に投げた。
シュートを放った相手チームからは悔し紛れのため息が聞こえた。そうそう、ゴールを決められてたまるかと若林は立ち尽くす選手の顔を睨みつけた。

攻守が変わり敵側に選手が集まると、若林は少しホッとしたようにぶつかったゴールポストに凭れ掛かるようにしてわき腹を押さえたが、試合はすでに後半戦で今だ0対0の接戦。多分、点を先に入れた方の勝ちは想像に難くなかった。
後少し。
そう思い、今だ痛みの残るわき腹をさすり、日本の守護神は試合に集中した。







「大丈夫だった?さっき・・・。」
「んぁ?そうだな〜。まぁ、しかし、俺様が守ってるんだから、問題ねぇよ!」
「聞いてた?僕の話・・・?」
「あぁ?」
浴びているシャワーの所為か、それとも今だ試合の熱が覚めやらないのか、身体から湯気を出しながら岬が尋ねてきた。
「だから、若林くんの身体だよ。さっき、試合の後半戦でぶつけただろう?ゴールポストに・・・。」
「あ・・・・あぁ。そんなこともあったなぁ〜。」
忘れてた、と呑気に答えながら若林はまるで人事のように先ほどの試合を思い出した。

そういえば、思いっきりぶつけたっけ・・・。
あの時は試合に集中しててすぐ忘れちまったけど、結構痛かったなぁ〜。
かなり威力のあるシュートだったし、コースも際どかったしな。でもまぁ、あんなシュートを止められるのは俺ぐらいしかいないもんな。さすが俺だぜ!

自分の守備を思い出し、惚れ惚れしている事などすぐに分かる顔で天井を見上げている若林にため息を吐きながら、岬は「これなら心配ないね。」と呟き、先にシャワー室を出た。ほとんどの選手はすでにシャワー室を後にしていて、残るは岬や若林以外にはもう2〜3人しかいなかった。
岬の言葉に再度念のためと、若林はぶつけた脇を撫でさすってみるが、大して痛みもなく腫れているわけでもないので、ぶつけた脇腹よりも試合の出来具合に頭を切り替えて若林もシャワー室を後にした。


















「もうっ、若林くん・・・。疲れていないの?」
カチヤリと音を立ててコーヒーカップをテーブルに置くと、岬は呆れたように若林に言った。
食後、のんびりとコーヒーを楽しんでいたはずが、いつの間にやら、若林からは違う空気が立ち込めていた。
「あぁ?疲れているっちゃあ、疲れているけど、それとこれとは別だ!ちゃんと岬の為に体力を残してあるからなぁ〜vv」
「なんだよ、それぇ〜。」
クスクスと笑いながら、岬も満更でもなさそうに若林の髪に手を伸ばして梳いた。
一見ゴワゴワに硬そうな髪質だが、それでも撫で擦れば思ったほど嫌な感触はしない。いや、寧ろクセになりそうな手触りがする。
その程よい手触りの髪をひたすら撫でながら、岬は若林からの口付けを受けていた。
軽く啄ばむようなそれから徐々に濃厚なそれに変わり、気が付けば舌が絡みあいながら脳を刺激する音を立てていた。
「んぅ・・・。んふっ・・・。」
若林の頭を撫でていた指がいつの間にか、震えるようにして若林の髪に絡みつく。
若林は岬のその反応に気を良くして、さらに舌を潜らせた。
縺れ合い絡み合うようにお互いの身体に触れ合って、いつの間にか座っていたソファからずり落ちてしまっていた。多少冷たさを床に感じるが絨毯がひかれている為さほど気にもならない。いや、それどころか身体の熱さが床に伝わりそうだ。
ギュッとシャツが皺になるぐらいに握り締め、脳天にまで響いてくる快感に絶えている岬を見て、若林はクスリと笑った。
「試合に勝った御褒美、くれるだろう?なぁ、あっち、行こうか・・。」

すでに岬がこうなることは計算づくだったのか、岬の返事はその身体が答えていると言わんばかりの素早さで一回り細い体を軽く抱き上げると、抗議の声も聞かずにスタスタとドアの向うに覗いているベッドへとそのまま歩いていった。
「ちょ・・・。わかばやし・・・くんっ!」
まだ夕食後の片付けが残っているからとか、見たいTVがもうすぐ始まるんだとか、そんな声には耳を貸さずに若林は自分の欲求を最優先してそのままベッドへと岬の身体ごとダイブした。
どさっと軽くバウンドしながらもそのまま岬の上に乗り上げてシャンプーの匂いを首筋に嗅いだ。
あぁ、この匂い、好きだな。
と囁きながら軽くチュッと耳の後ろに口を寄せる。
そこは岬の性感帯か、ビクッと身体を震わせる反応に若林はもう自分のペースに持ち込めたとほくそ笑む。
「やんっ・・・。わか・・・・ばやし・・・くんっ。」
竦めたその身体に若林はさらに欲情を表に表せて岬を求めた。
「みさき・・・・。いいだろう?」
「だけど・・・。」
「どうせ、明日は練習ないし・・・。俺、もう止まんねぇぜ。」
グイッと腰を押し付けて岬に今の自分を教える。
もやは後戻りは出来ないと声だけでなく全身で教えると、岬は顔を赤くしながらも若林の身体に手を伸ばし、摩るように何かを確かめているようだった。
「しょうがないなぁ〜〜〜。だけど・・・大丈夫?」
「なにが・・・?」
「試合でぶつけたところ?」
撫でながら若林の顔を覗きこんだ。
「見ての通りだぜ?それよりこっちの方は臨戦態勢万端だぜ?」
ニヤリと笑って岬を安心させる。若林にしてはこれは怪我の内に入らない程度のもので、痛みも全くないといえばウソになるが、大して痛くないのは本当だった。

それよりも。
脇の痛みよりも下半身の方の痛みの方が重大だ。正確に言えば痛みという言い方は違うかもしれないが、窮屈なジーンズの中ですでに頂点まで上り詰めた昂りを押さえられないのは確かに痛い。
それを岬に改めて判らせるようにギュウと下半身を再度押し付けた。
岬の代わりにベッドがギシッと音を立てて返事をした。
首まで赤くしてベッドの返事は間違いではないことを肯定している岬に手を伸ばしサラリと流れた透き通った茶色の髪を一房掴み口付ける。
「みさき・・・。いいだろう?」
返事は先ほど違う形でもらているのに、ついつい意地悪のつもりで再度聞く。岬は脇腹に伸ばしていた手をすっと胸に移動させコクリと頷き、妙な厭らしさを伴って若林の胸を撫で擦りだした。
その手の動きに若林も煽られて、岬の喉元に噛み付くように舐め上げる。
そうして一度お互いの瞳がぶつかると、双方の服を破らんとばかりに激しさを伴って脱がせた。ボタンを外すのももどかしいと云わんばかりの勢いでもって。


お互いの身体にもはや何も纏っていないのを目にすれば、更に欲望がそれぞれの中心に現れた。
すでに視線だけでイきそうな勢いで蜜を溢している岬はその液体を若林の身体に塗りつけるように若林の身体に縋りいてきた。
若林もガマンする必要もないとばかりに岬の腰に手を伸ばし、どうやって岬を攻め立てるのがいいかと考える間もないくらいに身体を押し付けてきた。
「あぁんっ!・・・・わか・・・ばやしくぅん・・・・。・・・・あああっっっ!!!」
「みさ・・・・きっ・・・・。っっ!」
時々、岬が心配していた脇腹にはやはり痛みを感じたがそんなことはどうでもよくなるほど、若林は岬を堪能した。












「ヒビが入っていますな・・・。全治1ヶ月ってとこでしょうか・・・。いつケガしましたか?ヒビが入ると徐々に痛みが酷くなるので今がピークで痛いんじゃないですか?」

がっくり項垂れる若林に、目の前の老医者は淡々と説明をしていた。



あれから、1週間経っても痛みが治まらないどころか、反って痛みが増すことをポロッと口にしたため、岬にさっさと病院へ行け!と怒鳴られ、若林は渋々近所にある接骨院へと足を運んだ。
何かとケガが多い為顔なじみではあるが、今日は半ば呆れ顔をされていた。
「どうしたんですか?」
と聞かれ、試合でぶつけたと言ったら、「は?」という顔をされた。ここ2〜3日試合がないのは、サッカーファンであるこの老医師も知っていたからである。
「1週間前」と言って、さらに「はぁ?」と言われた。
「よく今までほったらかしにしていたものですなぁ〜。どうしてすぐに来なかったのですか!」と説教半分に身体にシップを貼ってくれた。
治療を受けながら若林は苦笑いするしかなかった。
そりゃあ、ケガをしたのを大丈夫と言ってセックスをした手前、岬には「痛いんです。」とはとうてい言えなかった。
そして、ヒビに気が付かずにその晩Hなことをしていましたとは、目の前の医者にはもっと言えなかった。





もちろん家に帰って岬に散々怒られたのは言うまでもなかった。




END





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コメント
ごめんなさい。くらだないです。(爆)しかもH度低いです。(どうした、私・・・。←え?)
元ネタ(?)は半分実話だったりして〜。(あわわ)
いや、まぁ、・・・・はぁ〜、聞かないで下さい。我が家のことは・・・。(死)
だってホントにそんなに痛くなかったんだもんっ!(開き直り)