タギルオモイ
―― キスをする時に女が目をつぶるのは本能によるもの ―― 僕は女じゃないから、例え、君からのくちづけを目をつぶって待ちわびていても、君の熱い唇の感触に、薄く目を開ける。 僕の反応を確かめながら、その先へ、と進む、君の視線を捕らえるために。 君の熱い指先が、僕を包む衣を剥ぎ取って、冷たい外気にさらしていくのを見るために。 君の瞳の中に、荒れ狂う、僕への欲望を確かめるために。 ――― キスをする時に男が目をつぶらないのはいつでも外敵から身を守るための本能によるもの ――― 君の熱い唇や、指先が、僕の身体を溶かしていって。 僕の身体の、そこ、ここに、君の残す花が散って。 僕の思考は、もう、どこかに、飛んでいって。 僕の瞳は、何も写さなくなって。 それでも、僕は目をつぶらない。 僕は、今、戦って、いるんだ。 僕を想う、君の想いに、負けられない、負けたくない、君を想う、僕の想い。 ――― 受け入れられない身体の痛みと引き換えに、君の想いを受け入れよう。――― |