月夜の晩に
僕は見てしまったんだ。月に向って吠える、若林くんの姿を・・・ どうしよう?何だか見てはいけないようなものを見てしまったような?気がする・・・。 僕はその時、昔見た『狼男』の映画のワンシーンを思い出していた。 どうしよう?若林くんの背中からバリバリって毛が生えてきちゃったら?まさか、ね? 気にしすぎだとベッドに戻って眠ることにした。 ドイツの若林くんの元へ遊びに来てから今日で3日。 珍しいことにちっとも手を出してこない。何だかさみしいや・・。きゃ☆////いやんv何考えてんの!僕! 明日は彼の誕生日だけれど・・・どうしよう?プレゼント。 若林くんは「お前でいいv」なんて言ってたけど、でも、こんなに手を出してこないなんて・・・ 何か体に問題でもあるのかしら? このままじゃ、当日もなんにもなしなんてことに・・・さみしい・・・。きゃ☆/////だから!何考えてんの!僕ったら! ジタバタしてたら後ろから若林くんが声をかけてきた。 「何やってんだ?岬?」 はっっ! 「え〜?えと、腕がだるいな〜なんて・・あは♪」 「朝っぱらから元気だな。ふぁ〜〜〜・・・」 若林くんの方がよっぽどだるそうだ。目の下にクマなんてつくっちゃって、そうでなくても熊なのに。 「若林くん・・もしかして、体の調子が悪いんじゃないの?大丈夫?」 「ん?どこも悪くはないぞ。体調も万全に整えてるしな。大丈夫、大丈夫。ハハハ。」 そうかなぁ?なんだか目が虚ろだよ?そうは思ったけれど、本人が大丈夫だって言うんだから、それ以上はなにも聞かなかった。 後から思えば、このとき追求していれば後々こんな目には会わないですませられたのかもしれなかったのに。 とうとう誕生日当日になってしまった。心をこめて手料理をつくって、ケーキもなんとかふっくら焼きあがったから、もう準備は万全。 誕生日プレゼントは・・・今から手作りなんて間に合わないし、元々なんでも持ってる人だから(お金持ちだもんね。くすん) ほんの気持ちのしるしだけ。暖かそうな色をしたマフラーを買ってみた。 僕がいない間、僕の代わりに彼を暖めてくれますようにvいやんvロマンチック☆ 街中もそろそろクリスマスムード満点になっていたせいか、今夜の予感に気分が高揚していたせいか、僕はなんだかスキだらけだったんだ。 「岬の手料理はいつも上手いが今日はまた格別だな!」 なんて言われて僕の方がうれしくなってしまったような食事の時間も終わり、誕生日ケーキをデザートにゆっくりいただいて。 「誕生日おめでとう♪若林くん。はい、プレゼント!」 「え?あぁ、ありがとう・・・ところでこれって、今夜はなし。ということなのか?」 「/////いえ、あの、その、お望みとあれば・・・もにもに・・・」 「じゃぁ、先にシャワーを浴びておいで・・」 引き寄せられ、耳元に囁きとふんわり唇にキスを落とされる。まるでダンスに誘われたレディのようにバスルームへとエスコートされた。 なんだか今日は変な感じ。月が満ちると魔力が高まるって言うけれど。空には満月。僕も魔法にかかったの? 入れ替わりにバスルームへと消えていった若林くんをベッドの上で待ちながら、僕はぼんやりそんなことを考えていた。 こんなに紳士的にロマンチックなムード満点の誘われ方をしたのは初めてかも知れない。 あまりにもぼんやりしていたのでベッドの端が軋んで傾くまで若林くんが戻って来ていたことに気付かなかった。 はっとして見上げれば、優しげな瞳。あぁんvもう、どうにでもしてぇぇ〜〜んv お互いを確かめ合う濃厚なキスの後、音を立てて離れていく唇が名残惜しくて溜息がもれる。 気がつけば、羽織っていたバスローブも身体には残っていなくて・・・ 「岬・・・まずはこれを着て・・・」 え?なぁに?もう脱いでしまったのに、どうしてまた何か着るの? 頭の隅でかすかに疑問が浮かんでいたのに、もうろうとした意識に我を手放してしまっていた僕にはされていることの意味がわかっていなかった。 次に気がついたのはネグリジェを着せられた後だった。それともベビードールとかいうものなのかな? 薄い布地で薄水色の。フチには白いレースがひらひら。頭にもなんか乗っかってるし? 「・・・若林くん?・・・これって・・・なに?・・・」 下をむいたまま、目線だけを上にあげて上目遣いに彼を見た。 「かっ、可愛い!可愛いぞ、岬っ!!その上目遣いも最高だっ!似合う〜v似合いすぎ〜〜vv」 「だ・か・ら!これは何?って聞いてんだよ!」 「何?って。今日は『誕生日プレゼントに岬』をくれるんだろ?俺、そのためにここ3日間出さないで溜めといたんだぜ?一晩中た〜っぷり楽しむためにな!」 なんじゃと?それじゃあ体調を整えてるってこのことだったのか!?え?じゃあ、あれも? 「もしかして、この前、月に向って吠えてたのも・・・」 「あ、見られてたのか〜?いや〜、お前があんまり可愛いもんで、ついつい襲いそうになっちまうのを我慢し切れなくて、ストレス発散に、な。ハハハ♪」 僕はまるっきり違う意味で身体が熱くなって、顔が紅潮していったのだが、馬鹿熊は相変わらず自分にいいように意味を変換していた。 「お〜。うれしくて照れちまうか?うん、うん。今日はいろいろ趣向をかえながらた〜っぷり、可愛がってやるからな♪うへへへへvvv」 その言葉にはっと周りを見渡せば、どこでどう仕入れて来たのか?セーラー服やらチャイナドレスやらのコスチュームから鞭、縄、蝋燭、それにピーやらピーやら・・・ 〜いやらピー!!!こんな変態親父い〜や〜だぁ〜〜〜!!! 変な熊と書いて変態=若林源三と読む。・・・そんなこと考えてる場合じゃないだろ?僕ぅ〜ッッ! 言葉も出せず、あわあわとベッドから逃げ出そうとする僕の腰をぐっと捕まえて身体を乗り上げてきた変態熊はとどめにこう言った。 「『お望みとあれば』って言ったよな?岬?ホントはお前もさみしかったんだろ?ん?」 〜〜くうぅぅ〜〜・・・痛いところを・・・はっ?いや、いやん。助けて翼く〜ん!僕、そんなに餓えてないもん! 小さく丸くなってはみたけれど、大きな身体に包み込まれて、優しいキスを沢山受けたら、やっぱり身も心もトロけてしまって。もう身体に力が入らない・・・ 満月の魔力に若林くんは狼男に変身しちゃった☆僕は月の白兎になっちゃって、狼さんに食べられちゃうんだ。 でも大丈夫。裸に剥かれて体中が真っ赤になってしまっても、心優しいオオクニノヌシノミコトは僕の身体を綺麗に洗って、真っ白な真綿に包んでくれる筈だから。 END |