happy happy birthday?
先日のことであった。 岬に1本のTELが入った。 岬の永遠のパートナー、大空 翼からのTEL・・・。 (普段忙しくてなかなか連絡をくれないくせに一体何だろう?) と思いながらも、彼の話を聞くとその内容は以外なものだった。 「若林くんの誕生日、もうすぐだろう?せっかくだから、その日、12月7日に今ヨーロッパにいるメンバーを集めて若林くんの誕生パーティしない?もちろん彼の家で!!」 (若林くんの誕生日・・・。なんで翼くんが??) 『今までは遠くて一緒に祝えなかったけど、今年はせっかく陸続きになったことだし、岬とふたりきりで誕生日を過ごしたい』と以前、若林は言っていた。 誕生日を忘れていた訳じゃないがこちらから『何かプレゼントを』と言う前に本人からの申し出、しかも『ふたりきり』ということに少々戸惑った岬は返事をしていなかった。そろそろ返事をしなくてはと思った矢先に翼からのTEL・・・。 でもそれはTELの向こうの彼には内緒にして、岬は聞いた。 「若林くんはOKなの?」 「うん、最初ちょっと考えてたようだけど、でも、OKもらったから〜vv」 (と、いうことは僕が返事をしなかったからなのかな・・・。若林くんに悪い事しちゃったかな・・・・。でも、この方がいいや〜。) 内心若林に申し訳なかったと思いながらも、久しぶりに皆に会えるのがうれしい岬は翼からの申し出にOKをした。 岬がフランスに渡ってから初めて皆と会う。 (この歳になっても誕生日パーティなんて子どもみたいでおかしいけど、まぁ、皆と会える口実になっていいかぁvv) 久々の再会にワクワクしながらTELを切った。 ピンポーン。 さほど待たされずにその家のドアが開かれた。 「よぉ、よく来たな。」 「おめでとうvv 若林くんっ。」 大の男に花束なんて・・・と思いながら、いつも送ってもらっているお返しとばかりに両手いっぱいのバラの花束を若林に手渡す。 翼が『きっと若林くんのことだから照れちゃって顔が真っ赤っかだよ。かわいいvvかもよ』なん言うものだらから、ついついホントに買ってきてしまった。 しかし岬の予想に反して、真っ赤に照れるどころか大喜びしてくれた。とびっきりの笑顔に岬の方が赤くなってしまう。 (う〜〜〜ん。結構、花って貰い慣れてるのかなぁ。) でも喜んでくれたからまぁいいかぁ、と岬は案内されながら中に入る。 「そういえば、ごめんね。」 「何が?」 「翼くんから連絡もらう前、君からのお誘い、返事しなかっただろ。あれ・・・」 「あぁ、そのことならもういいんだ。今日、来てくれたし。」 若林が優しく微笑む。 「そうっかぁ、よかった。」 ホッとして岬も笑顔を返す。 「そういえば、皆、もう来てるの?久しぶりだなぁ」 しかし、ニコニコしながら掛けられた言葉に一瞬若林の肩が震えたのは、岬の気のせいであろうか・・・。 「あぁ、翼は・・・もう、来てるぜ。」 リビングのドアが開けられる。 そこへ飛び込んでくる翼の明るい声。 「久しぶりっ、岬くんっっ!」 「久しぶりだね、翼くん。ユース以来だよね。どう、元気?」 「俺は全然元気さっ。スペインはいいところだよ〜。この間なんて闘牛見に行っちゃった〜vv」 「あぁ、いいねえ〜。闘牛かぁ〜。僕も見に行きたいなぁ〜。」 「うんっ。今度、おいでよ〜。案内するからさっ。泊まりでおいで〜vv」 懐かしさに話は弾むが、ふと気が付けば他のメンバーが来る気配が一向にない。 それに花を生けにでも行ったのか、リビングから出て行った若林もあれから姿を見せない。 「あれ?今日ってメンバーこれだけ?小次郎は?葵には声掛けなかったの?それに若林くんもどこ行っちゃったんだろ〜?」 「う・・ん。メンバーは今日これだけなんだ。皆、都合悪いって・・・・。」 「・・・そっかぁ〜。残念だなぁ。皆と会いたかったな。ま、でも3人でも久しぶりだし。南葛市、ここ最近だいぶ変わったんだよ。知って・・・」 「俺もっ。」 突然、翼が話を絶った。 一瞬、何か翼を怒らせたのかと思った岬だったが、何故か翼はとても機嫌がよくて。 「俺も今から帰るんだ〜vvじゃぁ、岬くん。後、よろしくネvv」 「は??」 話がわからない岬はボーぜんと翼が立ち上がるのを見つめてしまった。 「おうっ、翼、悪りぃな。」 そこへこれまた突然、どこへ行ってたのか、何故かバスローブ姿で戻ってきた若林に目をやる。 「あれれ??翼・・・・くん??若林・・・くん??」 「若林くんっ。あんまり、岬くんいじめちゃ、ダメだよっ!!」 「・・・・・・??」 「バッカだなぁ〜、翼。俺、優しいから安心しろって!!」 「・・・・・・??」 二人の会話についていけない岬は無言のまま、動けないでいた。 「じゃぁ〜ね〜。」 「おうっ。」 「・・・・・・??」 「この貸しは、7月に返してねぇ〜vv」 「任せとけって〜vv」 「・・・・・・??」 バタンッ さっさと翼はドア閉めて・・・。 「・・・・って、待て〜〜〜〜〜いっ!!!」 あわてて岬は翼を追いかける。 「どういう事だよっ!!」 「俺から、若林くんへのプレゼントだよvv」 「え??」 「だから岬くんなのvv俺から若林くんへのプレゼントは!」 もはや岬の頭の中は真っ白を通り越して無を極めていた。 「つい先日ね、俺達のチームがドイツに遠征した時、若林くん見に来てくれたんだ、試合。その後、いろいろと話をしてて何故か歳の話から誕生日の話になって、若林くん12月7日っていうだろ。せっかく同じヨーロッパで一緒にがんばっているし、いい機会だからヨーロッパにいる皆で会ってお祝いしようか?ってことになって。で、誕生日に何が欲しい?って聞いたら、若林くんから出た答えが『岬くん』だったんだ。ただそのまま言っても岬くん、OKしないだろ?だから、悪いとは思ったけどこんな形をとらせてもらったんだ!」 岬に翼の言葉が耳に入っているのかいないのか・・・。 「ごめんねぇ。だから、結局皆は呼ばなかったんだ〜。だって、呼べないだろう?こんな場に・・・。ねvv」 (プレゼントが僕・・・・。プレゼントが僕・・・・・。) 固まった岬をそのままに、翼はさっさと帰ってしまった。 「じゃ〜〜ねぇ〜〜vvがんばってねぇ〜、今夜〜vv」 「さぁ、岬vvお前もシャワー浴びて来いよ。そうそう。さっきのバラは効果的に使おうぜvv」 何の疑問も躊躇もなく、若林は、先ほど岬に貰ったバラの花束を持って寝室に入って行った。 (だまされた〜〜〜!!翼と若林にだまされた〜〜〜!!) ワナワナと拳を震わせ立ち尽くす岬に、追い討ちのように奥から声が掛かった。 「早くねぇ〜、ハニーvv」 END |