寝正月




ふあぁぁ〜〜〜〜。と大あくびをしてしまった。


つまらないといえば確かにつまらないが、こんなにのんびりとした時間を過ごすのは、一体いついらいだろうとも思う。
ゴロリと寝返りを打つと、ちょうどこたつの天板に腰が引っ掛かった。
いてっ、と声に出してみるが、実際は大して痛くはない。やはりなんとなく暇だから声に出してみたかっただけのことだろう。
うつ伏せになりながら、手元にある孫の手で少し離れたところに転がっている枕を取り寄せる。ずずず、と枕の端に孫の手の先を引っ掛かけて寄せるぐうたらな仕草に自分でも笑ってしまった。

仕方がないじゃないか、動きたくないものは動きたくないのだ。

そう内心誰にともなく言い訳をして、引き寄せた枕に頭を乗せて寝る準備に入った。こたつはもちろんつけたまま。テレビまでついたままなのは、まるで見ながら寝てしまう親父みたいだが、心地よい睡魔が忍び寄るのには勝てない。テレビのリモコンが届かないところにあるのもまた、理由にしてしまおう。


新たな言い訳を見つけて、うとうととしたその時、耳の遠くでバタンという音が聞こえてきた。



「お邪魔しま〜〜す。」

あれ?ピンポーンというインターホンの音は聞いた覚えがないはずだ、と思いながら閉じた瞼をゆっくりと開ける。
いつの間にか勝手に上がってきたのだろう。声とともに足音も聞こえてきた。
もちろん聞こえてきた声は聞きなれたもので誰だがすぐにわかったので、上がってくる事に抵抗はない。それどころか、開けた瞼に反してまだ睡魔に誘われている脳は、その声をまるで子守唄の代わりに聞いた。再度、瞼が閉じられていく。
とても心地よい。

と、足音が耳元で止まった。


はぁ、とため息が漏れたのが気配でわかった。

「まったくお正月からなにぐーたらしてんだよ・・・。」

呆れた様子はやはり声だけでなく気配でもわかる。

が、たまにはいいじゃないか。という抵抗する声は音にはならないかった。もぐもぐと、口を動かすに留まっている。

「ったく・・・!」

座ったのだろう。枕元で衣擦れの音がした。上着を脱いだらしい様子も目を閉じていてもわかった。

「ほら、待ってるから支度して、初詣に行こう!」

半分怒っているわりには、半分楽しそうな声は、久しぶりに一緒に出かけられるからだろうか?

あぁ、でも眠いんだよな〜。
と、チラリと上目遣いに瞼を少し開けた。
少し上がった眉は、やはり怒っているようにも楽しんでいるようにも見えた。


と、ぼんやりとしていると、いつの間にか並ぶようにごろりと転がる。
そして急に目の前に相手の顔が近づく。

チュッ

とやはり久しぶりのキスは軽く触れられた程度だったが、それでも目を覚ますのにはとても刺激的だった。

がばり

と飛び起きると、慌てて身支度を始める。

今、その気になっちゃあまずいよな。なんてったってまだ初詣にも行っていないのだから。と、前々から一緒に行く約束をしていたのを思い出す。

簡単に支度をするとお待たせと、声を掛ける。
と、今度は今までとは立場が逆になっていることに気がつく。
いつの間にか待っていたはずの相手が寝ているのだ。
先ほどの自分の立場も忘れて少し声を荒げて起こす。

「ほら、若林くん!行くよ、起きて!!」

うっすらと瞼を持ち上げて若林くんは、のそりと手を挙げた。

「わりぃ、岬・・・。眠い。10分だけ寝かせてくれ・・・。」

そう言って、また瞼を閉じてしまった。
待たせた自分も悪いのだとちょっと反省して、自分も何故かその横に並んでこたつに再度よこになった。



END




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06.01.16.




コメント:ぐーたらな岬くんですみません。しかも、こたつが狭そう!