薔薇の園の誘惑16
「俺はてめぇに惚れてる!」 ずっと燻っていたものが漸く言えた満足感からか、ゾロの顔は充足感に満ちていた。何か清々しさまで感じているようだ。 が、対して、サンジはゾロの言葉に顔を歪める。 「確かに今まではお前との関係はセフレでいいと思っていたし、言葉の関係そのままだった。この島ではされるがままセックスに狂じた。だが、いろんな女とセックスしていた気が付いたんだ。本当に抱き合いたいのはお前だけだと。そして、それ以上にずっと傍に居たいと思った。女を抱いている間中、ずっとてめぇに会いたいと思った。」 「・・・・・ゾロ。」 「俺はお前に惚れてる。」 一旦、言ってしまえば、こんなに簡単なものかと思うほどするりと言葉が出た。普段のゾロからは想像もできないくらいに次から次へと言葉が紡がれた。 後ろめたさはあるものの、真剣に思いを伝えたいからか、今度は真正面からサンジを見ることもできた。 「じゃあ・・・・さ。」 サンジは一度は俯いてから顔をゆっくりと上げた。が、目はあちこちとキョロキョロしている。 「俺がアーモンドと、その・・・・・寝たってわかってどう思ったんだ?」 「それは・・・・。」 一旦は口篭るが、やはり自分の思いはしっかりと最後まで伝えなければいけないと思った。 「腹が立った。怒りでお前を殴りそうになった。が、俺にそんな資格はねぇ。俺の方こそ、お前に殴られても仕方がねぇって思った。」 「何で?」 「確証はなかったが、なんとなく・・・お前も俺のこと惚れてくれてるんじゃねぇかって思ってた。最初はただのセフレだったかもしれんが、いつまでも気持ちがなくても続くもんじゃねぇって思った。だから、てめぇももしかしたらって思ったんだ。今回、成り行きとはいえ、俺は多くの女とセックスをした。だから、お前の方が傷ついているかもしれないって思った。それは間違っちゃねぇか?」 「あ・・・・・ぁ。」 サンジはあさっての方向を見ながら自嘲した。まだゾロの方を見ることができない。 「俺は・・・・・・。結構・・・・・傷ついたぜ?・・・・・・・でも、俺だってお前にとやかく言う資格ねぇもんな・・・。ナミさんにも言われたよ。ケジメつけろって・・・。」 「てめぇは・・・・。」 「俺は・・・・。」 今度はサンジもゾロを見つめた。漸くというようにゆっくりと顔を向ける。 「俺もてめぇに惚れている。お前の言う通りだ。」 「そうか・・・・。」 ほうっとゾロは息を吐いた。 なんとなく程度に思っていたのだ。核心があったわけじゃない。 サンジの言葉を聞いて体から力が抜けていくことで、肩に必要以上に力が入っていたのに気が付いた。 が、次の言葉を聞いてすぐに眉を下げる。 「だが・・・・俺は俺の意思で彼女を抱いた。てめぇとは、事情がちょっと違う。」 サンジは真剣だ。 今度はサンジの肩に力が入っているようにゾロには見えた。しかし、ゾロも釣られてまた体に力が入ってしまう。 これは怒りではない。 「俺に対する復讐か?」 「そんなんじゃねぇよ?」 お互いの表情が最初と逆転している。 「その女を好きになったのか?」 ゾロの心配気な顔にサンジは笑った。 ふと気が付けば朝が明けようとしていた。お互いの顔に明るく光が差し込む。頬に当たる陽が暖かい。 二人して、陽が差し始めた水平線を見た。 そのままサンジは、海を見つめて話を続けた。 「彼女は・・・・アーモンドちゃんは、この島のコックで、でもまだ一人前になれなくて、それでも頑張ってて・・・、俺の料理を一生懸命覚えようとして・・・・同じ料理人として応援したいと思った。俺さ・・・・。まぁ、てめぇの言う通り、彼女のこと割りと好きになったってのもあるんだけどさ・・・・・それ以上に。」 海から視線をゾロに戻す。 「実はよ・・・・・・・・。この島に生まれるテメェの子ども達と遊ぶ俺の子どももいてもいいんじゃねぇか・・・って思ったんだよ。そんでよ、てめぇの息子共はやっぱり強くなりてぇって身体鍛えてよ。俺の子どもはおふくろもコックになるから、やっぱコックめざしてよ。そんで、ケンカしながら大きくなってくのっていいかもって思ったんだよ。」 「・・・・・・お前・・・。」 「だってよ、俺達の間に子どもはできねぇもんな・・・・。アーモンドにも俺の気持ちは伝えてある。それでもいい、と彼女は言ったんだ。だから、彼女を抱いた。」 自嘲の意味で笑ったのだろうか。緩めた頬が少し歪んでいた。 「バカか?お前は・・・。 「・・・・。」 ゾロの言葉にサンジはむっとする。 が、ゾロも笑っていた。が、その笑みはサンジとは違う意味合いのもので。 ゾロは一歩サンジに近づいた。 「いらねぇよ、子どもは・・・。俺達の間にはお互いがいればそれでいい・・・・。」 「ゾロ・・・・。」 「でもまぁ・・・・・・・この島に俺達の子どもがケンカしながら育ってくってのも悪かねぇな・・・。っていうか、息子じゃねぇよ、この島で生まれるなら!」 「わかんねぇぜ?なんせテメェの精子、強そうだしな。」 自分で言ってゲラゲラ笑い出したサンジにゾロは舌打ちをしながらその首を脇に抱えて座り込む。 「おわっ!」 縺れるようにして二人して座り込んだ。ゾロはそのままサンジの肩を抱く。 「てめぇの子どもこそ、気が強くて女なのに男みたいな奴かもしれん!!なんせ、あの女、俺を見て、驚きはしても全然怯まなかったもんな。」 「あの女って言うな!アーモンドちゃんだ!!」 「何でもいい!!」 お互いに大声で笑い出す。いつの間にか脇に抱えられるようにしていたサンジもゾロと肩を組んでいた。 「いつかまたこの島に来て、俺達の子どもに会いてぇな・・・。」 「止めとけ、また精子取られるぞ?」 「そりゃあもうねぇよ、ピチピチの若造じゃねぇもんよ、きっと・・・。」 「かもな・・・。」 一緒に見た朝日は海に綺麗に反射していた。 |
08.09.27.