永遠の思いはあるのか14




「う〜〜〜〜〜ん、いい気持ち!今日はまた絶好の洗濯日和ねv」

洗濯物を干しながら、ナミは空を見上げた。

「そうだね・・・。これだけ洗い物が多いと助かるね、この天気は!」

ナミに大量の洗濯物を手渡しながら、サンジは煙を吐いた。
プカプカと吹かす煙草にナミは顔を顰める。

「サンジ君!いい、その煙草が吸い終わってから部屋に入ってよ!」
「わかってるってばぁ〜〜〜〜〜。ナミさんvv」

バツが悪そうにサンジが肩を竦めると、ハッとした顔をナミに向けた。
ナミもサンジの言葉と同じタイミングでラウンジの方向を振り返る。

「ナミさん!」
「あ〜〜〜〜〜、もう起きちゃったの?いつもより早いんじゃない?今日は地図を描く時間はあまりなさそうね・・・。」
「いいよ・・・。俺が面倒を見るから、ナミさんは、これ干したらちょっと休憩したら?寝かすのに結構時間掛かってたでしょう?」

額に手を置き、あ〜ぁと項垂れるナミにサンジは煙草の火を消しながら、最後の洗濯物を手渡した。

「いいの?でも、おやつまだこれからでしょう?」
「もうあと仕上げだけだから大丈夫だよ。あいつが手がかかるのは寝起きだけだから、落ち着いたらすぐにおやつにするし。そのあとはルフィ達に相手をさせておけばいいし。」

ニコリと笑ってナミを見つめる。

「それに今日のおやつは、あいつの好きなプリンだから、きっとすぐに機嫌も戻るさ。」

親指を立てて笑う彼にナミも「まぁ、甘いのね。」と一緒になって笑う。

じゃあ、と手をヒラヒラさせながら、サンジは後甲板からラウンジに向かって歩き出した。
すでにサンジの手には煙草はなかった。

ナミはあまり煙草を吸わなくなったサンジに口には表さなくてもとても感謝していた。
自分一人だったら、とてもじゃないが手に負えなかったかもしれない。
小さい時に手が掛かる方が後が楽だというから、そうなることを期待はしているが・・・、それでもこの船の皆が協力してくれたから、サンジが一緒に手を掛けてくれたからここまで来れたと思っていた。


小さくて、泣き虫で、弱くて、手は掛かるが。
それでも可愛くて仕方がない。
かわいいかわいい一人息子。
この船の誰からも愛されている大事な息子・・・。












サンジがラウンジの扉を開けると、顔を真っ赤にして涙をボロボロ溢していた。部屋の隅にあるベビーベッドの上で幼子は身体を丸めて泣いていた。
すでに2才になるのだからベビーベッドでは小さいはずなのだが、ベビー用の割には大きめで丈夫なベッドとそれに対して、小さな身体。そして、海賊船という特殊な環境においてそのベッドは未だに活躍していた。
しかし、ベッドに中でゴソゴソしていたからか、毛布は蹴飛ばされて皺くちゃになっていた。寝相が悪いのは幼い子どもの特徴の一つだが、どこかで身体をぶつけたわけではなさそうだ。たぶん、怖い夢でも見たのではないか、とサンジは踏んだ。

「どうした・・・・、目が覚めちまったか?」
「あぁ〜〜〜〜〜〜〜〜ん、パァパァ〜〜〜〜〜ン!」
「よしよし・・・・・。」

抱き上げてポンポンと背中を優しく叩いてあげる。
そうすると落ち着くのか、暫くして泣き止んだ。

まだ涙の残る頬に軽くキスを送ると、片手で抱けるほどの小さな身体を左手に抱いたまま、冷蔵庫の扉を開けた。

「今日のおやつは、プリンだ・・・。好きだろう?」

冷蔵庫で冷たく冷やされて器に入っているプリンを見つけると、とたんに小さな頭が大きく頷いた。

「うん!」

幼子用に作られた椅子に彼を座らせると、サンジは改めて、おやつの最後の仕上げをする。
プリンをのせた器にチョコンチョコンと生クリームを絞る。その上に真っ赤な色をしたサクランボウを飾った。
ナミやロビンのような華やかな飾りつけはしないが、それでも小さな子が喜ぶ可愛らしい飾りつけでプリンを彩る。
幼子の方もおやつが待ちきれないとばかりにサンジの手にある器から目を離さない。

「よし、出来た。うまいぞ!」

味も彩りも子どもだけでなく、大人でも嬉しくなりそうなおやつをテーブルにとんと置く。
子どもはまだ上手く握れないスプーンをそれでもギュッと握り、プリンへと運んだ。


顔中プリンだらけになりながら黙々と食べるその光景に笑みが浮かんでしまう。顔だけでなく、テーブルまで黄色くなっている。大人なら踵を喰らわせるが、年齢的にも溢すのは仕方がない。いや、それどころか一生懸命にプリンを頬張る姿に微笑ましくすら思ってしまう自分に内心笑ってしまった。
目に入れても痛くない、というのはこういういことか、と改めて思ってしまう。

かわいいかわいい息子。みんなの息子。






目を細めてキッチンに凭れていたら、相も変わらずおやつに敏感な船長がラウンジに入ってきた。

「サンジ!俺もおやつぅぅ!!」

そのまま冷蔵庫へと突進するルフィをサンジの足が止めた。

「待て、すぐに用意するから、小さいもん順だ!」
「ちぇっ!」

口を尖らせるがそれでもおとなしく椅子に腰掛けたルフィにサンジは冷蔵庫を開けて、大人の分のおやつの準備を始める。
そうしたら、続けてウソップが飛び込んできた。

「おい、おやつなら今支度してるから待て!」
「おやつか、いいなぁ〜〜vvって、いや、そうじゃねぇ!ちょっと来てくれ・・・。」

嗜めようとしたサンジに釣られながらも慌てて否定した。それでも、ついついおやつに目をやるウソップに「なんだ?」と船長も声を掛ける。

「遭難船っていうか・・・、小船なんだけどよぉ・・・どうやら、誰か人が乗っているみたいなんだ。二人とも来てくれ。」

ウソップに連れられてみんなして甲板に出た。
すでに声を掛けられていたのか、チョッパーやロビン、ナミもそこにいた。
みんなして、ウソップの指す小船を見ている。

まだ小さな点としか認識できないが、ウソップの言うとおり、小船らしきものが遠く海原に浮かんでいるのがわかった。
が、肉眼ではそれだけだ。どこかで難破した船から脱出して流れ着いたものなのか、それとも元々ただの漂流物なのか。
まだ良く見えないが、人が乗っているのなら、たぶん前者が正解だろう。

「わかんねぇぞ?」

ルフィが目を凝らしてみている。
それに「ほら」とナミが双眼鏡を差し出した。

「あ・・・。ほんとだ。」

漸く海の上で点としてしかわからなかったものが何であるのかルフィにもわかった。
サンジはロビンに双眼鏡を借りた。
双眼鏡と交換とばかりに幼子をナミが抱き受ける。

「あぁ、確かに小さな船だな。あれ、どっかから流れてきたのか・・・。」

ナミが息子を抱きながら、「船を近づけてみましょうか・・。」と呟いたのと同時にルフィが突然叫んだ。

「あれ!!ゾロだ!」
「え!!」



突然の言葉に誰もがルフィを振り返った。






青空の下で波に揺られている小船には、緑の髪を持つ男が倒れていた。






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07.02.12




続きを漸く再開です。話が飛んでいるかも・・・。