さすがのGC



ただ今、全日本は合宿中。もちろん目指すはワールドカップ。


大多数のメンバーは、5日程前から宿舎に入って、すでに練習にをしている。
今日は、海外組が日本へ帰ってくる日であった。



「あれ、?どーした、岬?」
「あ、うん。松山」
その日、予定時間になってもまだ翼達は、到着していなかった。
すでに一日の練習メニューを終え、皆が片付けをしていたのだが、岬1人が何もせずに、すみっこでボーッと座り込んでいた。
心ここにあらず、という表情である。
それに気づいた松山が声をかけて、岬の次のセリフに絶句した。
「翼くん達、おそいなあ〜っって。せっかく久しぶりに再会できると思って、夜に向けて練習セーブしておいたのに・・・。」
「――――お、お前なぁ、そーゆー事は、プライベートで会った時にしろよ〜。かりにもここは、全日本の合宿所。いたいけな後輩達もいるんだぜ!」
「フン!僕、知ってるんだからね。去年の予選の合宿の時、小次郎とよく裏の林で会ってたの。なんなら、ここから大きな声で若島津に・・・・フガッ」
あわてて松山は、岬の口をふさぐ。
「ごめん。すいませんでした。私が悪かったです。許してください!!」
大汗をかいて、アタフタする松山に岬はニッコリと
「松山ったら、僕に勝てると思ってんの!?」
これから、岬と話をする時は機嫌の良い時にしようと思う松山であった。




夕食も終わり、皆、各自部屋に戻ったり、談話室でくつろいでいた時だった。ざわざわと、玄関の方からやけににぎやかな声が聞こえた。
やっと海外組が・・、翼を始め、日向や若林、葵が着いたのだった。
ピクンと岬の耳が反応する。大好きな彼の声を岬が聞き逃すはずがなかった。
思わずダッシュ!
廊下にいた、タケシが、
「今通ったのって、009?」
と思うほどのいきおい。
「つばさく〜〜〜〜んvv」
ドンドンッ!
すでに玄関で話をしていた、井沢や滝は誰に押されたのかわからないまま、いつの間にか玄関の隅においやられていた。
「――――――――?」

「あっ、みさきく〜〜〜〜ん。ただいまvv」
「おかえりvv。つばさくん」
むっぎゅ〜〜〜〜っvvと、かたく抱き合う。
一瞬にして、まわりはピンク色・・。
「遅かったじゃないか、翼くん!なかなか着かないから、僕、途中で何か事故でもあったのかと思って心配しちゃったんだから。」
「大丈夫だよ、岬くん。俺、岬くんの為なら、大ケガしようが死のうが必ず会いに来るって!!」
「うん、うれしいvv」
(幽霊になっても帰ってくるのか・・・)横で聞いていた日向は思わずさーーーっと血の気が引いた。
他の者も、一様に笑顔がひきつっていた。
「さあさ、早く入っておいでよ。翼くんは、僕と同じ部屋だからね。2階の真ん中だよ。」
ルンルンとスキップを踏む岬と翼を見送りながら
(僕もあれぐらいキャピキャピできたらなあ・・・)と自分のクールさを呪う三杉の横で
「やっぱりついていけねー」
と松山はつぶやいた。




遅くに着いて疲れているはずなのに、部屋からはキャーキャーと2人の声が、皆!聞いて!!といわんばかりに響いた。
「せっかくだから〜、一緒に寝ようね〜vv」
「え〜っ、でもベッド狭いじゃんか〜」
「大丈夫だよ!上と下に重なって寝れば狭くないよ!!」
「じゃあ、俺、上がいい!」
「翼くん、重そうだもん。僕が上がいいっ!優しくしてあげるから・・・。」
「う〜ん、じゃあ、じゃんけんにしよう!」
「うんっ」
「「じゃ〜〜ん〜け〜〜ん〜」」
「ぐ〜」
「ぱ〜」
「勝った〜〜vvうえ〜〜いっ、うえうえ〜〜〜っ。僕が上だからねっ!」
「いっ、俺が下・・・・」
肩を振るわせながら、ぐーの形の手を見つめる翼・・・。
「お、お願い、岬くんっ!3本勝負にして〜〜〜〜っっ」
思わず翼は岬の足にすがりつく。
「いや〜〜〜ん、体力もつかなあーー?」
「ちが〜〜〜〜うっ、じゃんけん勝負の事だってば〜〜〜っ」
翼の目はうるうるしている。それを見た岬は思わず、(かわいいっ)って抱きついた。
「もうっ!翼くんたらしょうがないなあ。じゃあ、後2回だよっ」
といいながら、そのまま翼のほっぺにチュッ。
岬にチュッとしてもらって、ご機嫌の翼はますます声が大きくなる。
「「じゃ〜〜〜ん〜〜け〜〜〜〜ん〜〜」」
バタンッ!!
そこへドアが大きく開き、三杉が仁王立ち。
「2人共、声が大きすぎる!もっと、小さな声で!」
と怒っているのに、岬が割り込むように
「三杉くんもくる?」
調子に乗って、翼も
「いや〜〜ん。さんぴ〜〜〜?」
2人して
「いや〜〜〜ん」「いや〜〜〜ん。えっち〜〜〜」
つられて三杉も
「・・・いや〜〜〜ん。・・・(泣)。・・ちが〜〜〜うっ!何やらせるんだ〜〜〜!!とにかく、慎むようにっ!!」
ハァハァと肩で息をさせながら、また、
バタンッ!!
とドアを閉めて、ドスドスと足音を響かせながら歩いていった。
「三杉くん、怒ってたね・・」
「うん、小さい声で・・・っていうより、ほら、こうしたら・・・?」
翼は岬の耳に口を寄せると、ささやくように話かけた。くすぐったさに思わず、岬の体がピクンとはねる。
「えへっ、岬くんの弱点ってここだったよねvv」
ペロッっと舌を出しながら、翼はさらにささやく。
「岬くん、愛してる・・・。」
腕もいつの間にか岬をすっぽり包み込むように回されていて・・・。
「翼く・・・ん」
岬はすでに顔を真っ赤にして、静かに翼に体をあずけている。翼は(してやったり!!)と内心、ホクソ笑む。
「ね、岬く・・ん、俺、会える日をず〜〜〜〜っっと待ってたんだ」
「僕もだよ、翼くん・・・」
岬の口をついばむようにキスをしながら、座っていたベッドに倒れこむ。その瞬間、岬の頭の中に「あれ?何かおかしい」という思い思いがよぎった。
「アー―――――ッ」
大声で叫ぶ岬に翼は一瞬、何があったのかと目をパリクリする。
「翼くんっ、逆じゃないか!!僕が上だろ〜〜〜っ」
「いっ、岬くん。覚えてたのか。ちー――っ」
「ほら、翼くん。僕が上!うえうえうえ〜〜〜ぃ」
「いや〜〜〜ん。岬く〜〜〜ん、やさしくして〜〜〜っ」
2人でベッドの上でバタバタあばれだし、もう何が何だかわからない状態になってしまった。




その晩遅くまで部屋からは大声ではしゃぐ2人の声が響き、ほとんどの者が眠れない夜を過ごした。
唯一、何故か用意していた耳せんを手にとり、
「やっぱり、ダメだったか」
と、1人つぶやく三杉を残して・・・。





次の日、皆は赤い目をこすり、あくびをかみ殺しながらもたもたと練習して、案のじょう、監督に怒られっぱなしだった。
その中で元気なのは、どこにそんな体力があるのか・・。
本人である翼と岬。そして、唯一、ぐっすり眠れた三杉であった。
(今日のあの2人の夕食に睡眠薬をまぜてやる)と思いながらも、それと同時に(結局、あの2人はどっちが上だったんだ・・・。)と、疑問が解けなかったのは、1人や2人じゃないはず・・・。
それは、2人と神のみぞ知る?




END