「では、いただきま〜す♪」
などと言いながらはだけた胸元に手を差し入れ、うなじに唇を寄せる。
「・・は・・あぁ・・」
薬の為に体中が痺れている岬はいつも以上に敏感になっていた。どこを触られてもちりちりとした痺れが電流を流されたかの様な刺激に代わってしまうのだ。
それを知ってか知らずか若林の愛撫が始まる。左手で胸の尖りをつまみ、押し潰す。舌で首筋を嘗め回し、時折耳たぶを甘噛みしてみる。そのたびにビクリビクリと大きく震える岬の反応に若林は喜んだ。
「・・あっ・・ぃ・や・・」
「嫌じゃないだろ?岬・・・ほら。」
「あぁッ!・・ぅ・ふっ・・んんんっ・・・」
布地の上からそっと触れてやるとその刺激だけで岬は急激に形を変化させた。それに気を良くした若林は岬の足を抱え上げるように腿の下から手をまわし、内腿にさわさわと指を這わせる。
「やっ!いやぁ!・・ぁぁん!」
もどかしい刺激に、知らず腰を振る岬に意地悪く問い掛ける。
「ああ、もう。嫌じゃないだろ?岬。どうして欲しいんだ?」
「・・・・・」
涙をこぼしながらただ首を左右に振り、縛られて自由に動かない体で自分から逃れようとする岬を胸元に差し入れた左手は許さない。
ぎゅっと胸の尖りを摘み上げると痛みに仰け反る岬は元の位置に戻って来た。
「ひぁっ!い・・痛いっ!・・・」
「あ、すまん。強すぎたか。」
ベッドに寝かせると痛みに怯えて縮こまる岬を安心させるように優しくキスを繰り返す。始めは涙を掬い取るため目元に。次に額に、頬に、そして唇に。
ついばむように何度も唇にキスを落とすと、岬はうっすらと目を開けた。涙に曇る瞳にははっきりとは写らないかもしれないが安心するようにと優しく微笑みかけてみる。
「ごめんな?痛くしたいわけじゃないんだ。逃げないでくれ。・・たまには岬からねだって来て欲しいんだが・・無理か?」
自嘲しながら唇を合わせ、深く口付ける。逃げる舌を絡めとって唾液を送り込むが受け止められずにそれは岬の口角から滴り落ちた。
抵抗もなくなったが、反応も鈍くなったようだ。
だが、感じていないわけではない。股間に手を伸ばせば、そこには岬の熱を示すものがある。
それに少し安堵して、布地の上から包み込みゆっくりと刺激を与えていくと岬の口からは甘い喘ぎが漏れてくる。
「・・ぅ・・はぁ・・あっ・ぁ・・ぁぁあん・・」
さらさらとした絹の肌触りは直接触れられる刺激とはまた違う快楽を岬に与えているようだった。先端からは蜜が溢れて赤い布地をさらに濃い緋に染めていく。
前が充分に起立したのを確認した若林は枕のしたから蒔絵の施された小箱を取り出した。中には華奢な小ビンが入っている。
「香油だ。・・いい香りだろ?新春らしく梅の香りにしたんだ。」
岬の胸の上に広げた手の上に香油を垂らす。ふわりと梅の香を漂わせる油は若林の手のひらから零れ落ち岬の胸の上にも点々と花を咲かせた。
たっぷりと香油を落とし濡れた指を岬の蕾に潜り込ませる。前に与えられた刺激とともに綻びかけていたそこはほんの少しの抵抗を見せただけであっさりと進入を許した。
花の奥に潜り込み、蜜のありかを探す蜂のように若林の指は奥へと進み、岬の感じる一点を探し出す。
「ふぁ・・ああん・・あっ・・あぁ・・」
苦もなく探しだしたそこを突付きながら、自分の通る道をつくるために指を増やし蠢く壁を押し広げていく。体を反らせ刺激に耐える岬の白いのどにも若林は花を咲かせていった。
前にも後ろにも充分過ぎるほどの愛撫を施され、さらなる刺激を求め始めた岬であったが、一番欲しい刺激を若林は与えてくれない。
もちろん若林も欲していた。身体も欲しいが、岬の可愛い一言が聞きたかった。今日はなんとしてでもその『一言』が欲しい!
若林は猛る自身を抑えながら、岬のひくひくと物欲しげな後ろから指を引き抜き、濡れている前の根元を布地の上から細い縄できつく縛った。
岬の目が驚愕で見開かれる。
「あぁぁあぁぁ〜!いやっ!!嫌!嫌!お願いっ!止めて!解いて!解いてよぉ〜〜・・・」
わぁわぁと泣き喚く岬を押さえ込み、若林は意地悪く何度も尋ねた。
「よしよし。岬が素直になったらな。岬、どうして欲しいんだ?何が欲しい?」
「ひっ・・あ・・解いて!解いて欲しいの〜!嫌、いやぁ〜!」
「ああ、もう。違うだろ?解くだけでいいのか?じゃあ、こっちは?ほら!」
言うなり綻んだ蕾に指を突っ込み、岬のイイ所を執拗に攻め立てる。
「あッ!ああっ!・・あああーっ!」
認めたくはなかったが暴れるたびに身体に食い込む縄の痛みが快感にとって代わろうとしていた。後少し。もう少しなのに・・・!
「いやっ!いや・・・いやぁ・・・あ・・・・い・・イ・かせ・て・・ぇ・・・」

『 堕ちたッッ!! 』
消え入りそうな岬の声に感極まって自分の方がイってしまいそうだ。ゾクゾクと背中が粟立つ感覚に震えながら岬の前を締め付ける縄を解く。
「アアアアーーーッッ!!」
悲鳴にも似た喘ぎを上げながら岬は己を解放した。その後も岬の身体はがくがくと震えが止まらない。
縛りつけた荒縄を解きながら、熱に浮かされたうわごとのように若林は岬を呼び、岬を堕とす呪文を囁く。『俺を望め』と。
「岬?岬・・・可愛い岬、愛してる・・岬。もっと、俺を欲しがってくれ。岬・・・次は?どうしたい?何が欲しい?岬?・・・」
身体を戒められていた縄と共に理性の戒めをも解かれてしまった岬は朦朧としながら呂律のまわらない口で若林を求める。
「・・あ・・欲し・い・・・おね・が・・ぃ・・ぃれ・・てぇ・・・・」
自分の首に縋りつき、泣きながらたどたどしい口調で求めてくる岬の可愛らしさに若林の理性も吹き飛んでいく。
野獣と化した熊は望んだ『一言』をやっと手に入れた満足感に浸りつつ、目の前の獲物にむしゃぶりついた。
「あぁあ〜v可愛いっ!嬉しい〜vvたくさん、たくさんシてやるからな!岬〜〜っvvv」
「はぁん!・・あ・あっ!ああんっ!・・ああっ!もっと!・・も・・とぉ・・ああぁ〜・・・」
二人の熱で暖められた香油はきつい梅の香りを室内に充満させていった。・・・・・
岬は朝とは違う日の光で目を醒ました。時計を見ればもう正午を過ぎている。
『・・・身体、痛い・・・あ、手首、痕ついてる・・ちゃんと何か着てるかな?・・・今度は『桜色の肌襦袢』?・・・・・』
ぼんやりと身体を確認しながら、昨夜の出来事を思い出す。
『・・薬盛られて・・『赤い肌襦袢』なんて着せられて・・・縄で縛られて・・・縄・・縛る?・・あぁ〜!あ・あんなトコ縛られてぇ〜!そ、そのうえ・・・ああぁああっっ!!僕はっ!何を言ったんだ〜!?」
バシバシ!と枕を叩いて怒っていると怒りの原因の張本人が現れた。
「ハァ〜イvモーニンvハニ〜vvすがすがしい朝だね?ご機嫌いかがぁ〜〜?」
ぶわしぃっ!枕は若林の顔面に命中。ただし、羽枕なので大した衝撃はない。
「朝じゃねぇっ!もう昼だっ!!それにご機嫌麗しいわけないだろぉおぉぉ〜〜〜!!!」
シャーーッ!と猫が逆毛を立てて怒っているのが岬の後ろに見えたのに、昨夜の出来事で頭がらぶらぶモードな若林はうっかり手を出してしまった。
「うぅんv岬くんったら、昨夜はあんなに素直だったのにぃ〜vv『イかせてぇv』とか『もっとぉ〜v』とかぁ〜〜vvv」
バリバリバリ!!と岬は若林の顔に思いっきり爪を立てた。
「いーーってーーっっ!!」
「言ーーうーーなぁあぁぁあぁーーー!!もう、翼くんのとこ帰るっ!!きいぃいーーーっ!!」
いつもならここで岬に謝り倒してしまう若林だったが、今年の熊は一味ちがった。
「フフフ。照れているんだね?怒った顔も可愛いよv岬くんvv」
『いつもと違う!?』敏感な岬は若林に対する警戒を強めた。『それにこの口調はどこかで聞いたことがあるような?』
「ふふん。翼は三杉のところだし。だいたい、昨夜のプレイは三杉先生のご伝授だ!翼も今ごろお前同様動けなくなっているはずだぞ〜!」
『そういえば薬を盛られた後、そんな話を聞いたような気もする。』岬はなんとな〜く昨夜の会話を思い出した。
「それにあいつ等はいつもこんな感じらしいぞ〜?翼は何をされても『もっと、もっと』っておねだりしてくるところが可愛いんだってさ〜♪」
「ええっ!?いつもあんななの!?」
別に翼達がいつも薬や縄をご愛用なわけではないがその部分ははしょって話を続ける。「正直過ぎるのが君の欠点でもあるよ。」との三杉先生のご忠告だ。ここは誤解していてもらおう♪
「そうそう。もし翼に『無理やり欲しいって言わされた〜』なんて言いに行ったら逆に『もっと素直に求められるように〜』なんて開発されちゃうかもな〜?」
岬はぞっとした。そんなことには慣れていないはずの若林にさえ翻弄されたのだ。ましてや翼ならどんな手練手管で苛め続けてくるかわからない。
『ああっ。翼くん。君は一体どんな性活をおくっているんだ〜(T_T)』
言い返せない悔しさに裾を噛み締め、耐える岬の姿もまたそそるvしてやったりの熊さんは心を弾ませ次の計画を行動に移すことにした。
「ところで初詣、どうする?」
「行ける訳ないじゃないか!僕、今日は動けないよっ!」
「そうだよな〜。俺もこんな顔じゃあ外に出られないし〜。」
若林の顔には岬のつけた爪痕がくっきりと縞を描いていた。
「じゃ、今年は『寝正月』ってことでvv」
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