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ピチャという音が部屋に響いた。それにあわせて「ううっ・・・。」と呻き声が聞こえ、何かが小さく蠢いた。
それは徐々に大きな動きに変わり、部屋の中の音も一層大きく響いた。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・!」

さらに激しさを増した動きは、ついにその何かが乗っているベッドまでギシギシさせるほど大きなものになっていた。

「あああぁぁっっっ!!!」

呻き声が甲高い嬌声に変わり大きく響いたと同時に動いていたものがブルブルと痙攣を起こし、ついには動きがなくなった。

「はぁはぁはぁ・・・。」

今だ荒い息遣いをしたまま、ベッドの上の1つの塊は大小の2つに別れ、小さな塊の方はゆっくりと人の形を形成しながらベッドから降りた。

「ま・・・待ってくれ。・・・まだ行かないでくれ。」

大きな塊から皺枯れた声がしたが、小さな人型は無視を決め込んだようで多少フラフラとしながらもそのままベッドの反対側にあるドアを開けるとさっさとそのドアの向こうへ消えていった。
暫くするとそのドアの向こうからシャワーの流れる音が聞こえだした。

「ちっ」

小さな舌打ちをした大きな塊はごそごそとそのままベッドの上で乱れたままになっていたシーツの上でごろんと仰向けに転がった。

「まぁいいか・・・。金さえ払えばいくらでも好きにさせてもらえるし・・・。」

ポツリとそう漏らすと目を細めて音が微かに漏れ聞こえるドアを眺めた。
そのドアの向こうには、先ほどまでまるでどこかネジが飛んで壊れたかと思われるほど乱れた、しかしそんなことを出来そうにないと思われるほどまだ青年というにはほど遠い幼さの残した男が熱い湯気の中ただ立たずんでいた。
彼の目は焦点が合っていないらしくうつろなまま、浴室から出るのをまだかまだかと待ち焦がれるベッドの上の男の存在などすでに頭にない様子だった。




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チャレンジャーさんた・・・。