誕生日おめでとうvv ―ピエール編―
リーグも終盤にさしかかり、チームの優勝がかかっていることもあってパリ市街地では、市民の熱気に溢れていた。 チームキャプテンであるエル・シド・ピエールはそんな中でもかなり冷静で、明後日の試合に向けての練習もほんの軽い調整程度で足を止めた。 今日はこれで上がるつもりらしい。 「よし、今日はこれで上がろう。いい感じに仕上がっている。これで明後日の対マルセイユ戦もいけるだろう。」 監督も一回り目をやると満足そうに言い残し、さっさと練習場を去った。 一斉にシャワー室に向かう選手たち。 皆調子がいいのだろう。軽いジョークも飛び出し、笑い合いながらそれぞれに練習場を後にした。 そんな中ただ一人、今だ芝生の上で立ち尽くす者がいた。 最後に練習場のフェンスを締めようとした岬がそれに気が付いた。 先程、一番に練習を止めたピエールだった。 フェンスを閉じようとした手を止め、岬はもう一度その中に戻った。 ピエールはずっとどこか遠くを見つめたままだった。 その傍まで静かに近づくが、何故か岬は声を掛けるのを躊躇ってしまう。 と、ピエールが振り返ってニコリと岬に笑いかけた。 「戻ってくると思ったよ、ミサキ。」 まるで岬がピエールの元に戻ってくるのを知っていたかのようだった。 その様子に驚きと怒りとが入り混じった顔で岬はピエールを見つめた。 「どうして、そう思うのさ。意地悪だな〜。」 そっぽを向いてしまった岬にクスッとしながらも、ピエールは優しく岬の頬に手を延ばした。 「ミサキの事は全部わかるよ。」 両手で岬の頬を包む。 と、それを拒むかのように岬はピエールを見つめた。 「ここ、どこだかわかってんの?誰か来たらどうするのさ。」 ジッと上目遣いでピエールを睨む。 「どうもしないし、大丈夫だよ。ミサキはかわいいから・・・。」 そっとそのまま少し屈むようにして・・・。 かるいkiss。 さらさらさら。 風が二人の傍を掠めるように髪を揺らす。 ゆっくりと離れるとまだ岬はピエールを睨んだままだった。 その様子にピエールは少し驚いてしまう。 「ミサキ、もしかしてキスの間も僕を睨んでいたのかい?」 岬はずっとピエールを見つめたまま、何も答えない。 「ミサキ・・・?」 「・・・・・・。」 「ミサ・・・キ・・・・?」 どうしていいかわからないまま、ピエールはもう一度岬に問いかけた。 「・・・ずるい・・・。」 「・・・・・??」 ポツリと岬は呟いた。 「ピエールはずるい・・・。」 岬の言いたいことがわからない。 ピエールはどう答えようものか迷ってしまった。 「わからない?」 コクリと頷く。 「ピエールは知ってるだろう?僕がこのチームでどう扱われているのか。」 ピエールは、ふとチームの皆のいつもの岬への態度を思い出した。 日本でもスポーツ選手としては小柄な方の岬は、ここヨーロッパにおいてはさらに小さく見えてしまう。 対戦すればその実力はわかるにしても、実際見た目ではどうしても軽い扱いをされてしまうことが多いのだった。 同じチームとして一緒にサッカーをする仲間もそれをもちろん承知していて、わざと岬をそう扱うことが多いのだ。それはスキンシップ的なものではあるのだが・・・。 だから今の言葉の意味も岬は頭ではわかっているのだが、感情の方がついてこなかった。 ピエールは岬のことを愛していてそうするのだが、岬としてはまるでマスコット的な扱いをされているような気がして仕方がなかった。 「ごめん・・。そんなつもりはないんだけど・・・・。」 「わかってる・・・。」 「ごめん・・・。気分害した?」 「うん・・・。」 「どうしたら機嫌直してくれる?」 「・・・・・わかんない・・。」 ピエールは俯いてしまった岬の頬にもう一度手を伸ばし、今度は上を向かせる。 「ねぇ、ミサキ・・。今日は特別な日だろう・・。だから、そんな気分のまま一緒に過ごしたくないんだけど・・・。」 パッと岬の目が見開いた。 「覚えてたの??」 優しい笑顔でピエールは答えた。 「忘れる訳、ないだろう・・・。愛する人の誕生日を。もう、この後の予定も決まってるんだけど・・・、来てくれないのかな??」 もう一度軽い口付けをしながら岬に返事を求める。 それに岬は顔を赤くしながら小さく答えた。 「・・・・・行く。」 とたんにピエールはぎゅっと岬を抱きしめると耳元でそっと呟いた。 「好きだよ・・。」 ピエールの胸の中で岬もそっと返した。 「・・・悔しいけど、僕も・・。」 やさしい風がまた二人の髪を揺らした。 END |
コメント:バラの王子様、ピエールの登場ですぅvv(笑)
やっぱり、このお方を出さないわけにはいかないでしょう〜!(ホントか?)
ちなみにこの中ではチームは『パリSG』です。・・・まぁ、あまりどこのチームかはこの話には関係ないと言えば関係ないのですが〜。
ピエールといえば『ボルドー』なんでしょうが、やっぱ、ピエールのこと!きっと、岬くんを追っかけて『パリSG』に入るだろうと・・・。
岬くんが何故『パリSG』かというと、わかるよね?『2000MILLENNIUM DREAM編』(オリンピック編とでも言うのか?)からです〜vv
それにしても最近、ちゅ〜スキだな。わたし・・・。(爆)