若林 源三探検隊特別番組
          
―日本の密林に原始人を見つけた!!―







まだ朝靄も晴れない、肌寒い早朝5時。
隊長の若林 源三は興奮が隠しきれない様子で深緑のジャケットのファスナーをスッと上げた。もはや眼も頭もすっきりしている様子できびきびとした動きをしている。
「隊長、準備が整いました。」
5〜6人だろう人の集まりの一番後ろから声が聞こえた。副隊長の井沢 守だ。
若林はキュッと帽子をがぶると一層引き締まった顔つきで皆に振り返る。
「よしっ、出発!」
隊員たちの声を揃えた「はいっ。」の返事と共に一歩を踏み出す。
皆緊張した面持ちで歩き出した。



今から始まる探検。
それは日本にも僅かに残っている、今だ誰も足を踏み入れたことのないような山奥に住んでいるという原始人の捕獲。
きっかけは某TV局からの依頼で始まった。






「・・・・と、いうわけでお願いします。ギャラははずみますから〜♪」
「しかし・・・・、もはや文明大国の今の日本にそんな所があるのか。と、いうか、そんなことありえないでしょう!」
こじんまりとした小さな部屋だったが質の良い調度品が置かれている応接室で若林 源三はまずそうにタバコの煙を吐いた。相手の言葉を否定でもするようにゆっくりと白い煙が消えていく。
「いや、結構目撃情報はあるんですよ。大丈夫です。いなければいないで、後は我々TV局側がなんとか上手くまとめますから・・・。」
「・・・・・う〜〜〜〜ん。でもそれってウソを放送するってことでしょうが?」
「探検家、若林 源三の名前を出すと結構視聴率いいんですよ。お願いしますよ〜。それに上手くまとめるってだけでウソは放送しません。ちゃんと若林さんの名前を汚さないようにしますから・・・。」
まだ若いだろうTV局のプロデューサーは机を挟んだ向こう側で作り笑いをしながら、なんとか若林の了承を取ろうと必死に言葉を並べなる。よくもまあそれだけ単語が思いつくのか、というほど賞賛の言葉をつらつらと口から出しながら、どこぞのブランドマークが付いたネクタイを少し緩める。なんとかして相手を取り込もうとする行為に自ずと興奮するのだろうか、僅かに汗も掻いていた。しかし、その仕草に若林は眉を顰めた。
「いや〜、本当に頼みますよ。現地では我々は同行するだけで、やり方は若林さんにまかせます。口は挟みません。しかも上手く原始人を捕獲したら報酬は3倍増しということで・・。」
報酬が3倍増し・・・。今まで歪められていた若林の眉がピクと跳ねる。

世界でも名高い探検家、若林 源三の外見は体格がかなり良く腕や脚の太さも一般人の倍はあると見受けられた。顔もかなり陽に焼けているのか、少し浅黒い。それだけで、探検家としてかなり経験を積んでいるとわかる。相手プロデューサーとのやりとりでも自信のある話し振りでその腕と実績も想像できた。
実際、彼はこのような番組には世界各国から声が掛かると言っても過言ではなかった。その為、お金には困らないだろうと思われるのだが、実際はいくらあっても困らないくらいに探検には費用が掛かった。実は探険家としてではなく、資産家としても彼は有名なのだが、それでも少しでも多くお金が貰えるのならそれに越した事はないと若林は考え出した。

口に挟んでいたタバコを艶のある陶器の上でギュッともみ消すとため息を吐くかのように相手に答えた。
「仕方ないですな。今回の仕事、引き受けましょう・・・。そのかわり、保障はしませんよ。アマゾンなどのまだ開発されていないジャングルのことならいざ知らず、この日本のことだ。原始人がいるとは到底思えない。」
ぱあっとその若いプロデューサーは明るい表情で若林の手を握って喜んだ。
「ありがとうございます、若林さん。絶対失望はさせませんよ、すでに下調べはしてあるんです。保障しますよ!」
ブンブンと握った手を大きく振る相手に苦笑いをしながら、若林は改めて話しを切り出した。
「じゃあ、打ち合わせをしましょう。」







企業秘密というわけではないのだがTVでは場所は告げられない、かなり山々が連なったとある場所。
確かにジャングルという言葉も当てはまらないこともないくらいに木々が生い茂り、気温、湿度、共にかなり高そうに感じられた。隊員の誰もが流れる汗をる拭いながら一歩一歩進んで行く。
民家といわれるものが既に見当たらなくなってから、何時間が経ったのだろうか。早朝に出発したはずなのに、いつの間にか空が赤く染まっていた。もうすぐ夜が来るだろう。
(まだこんな所が日本にもあったんだな・・・。)
若林は先ほどから一言も発しないままひたすら歩き続ける隊員たちを見回して、足を止める。
「よしっ。ちょっとしたスペースを見つけたらそこでキャンプを張ろう。今日はそこで一旦打ち止めだ。また、明日、早朝ここを出発して原始人探索を続ける。それから、この先に多分川があるはずだ。微かに水音が聞こえる。滝、キャンプの場所が決まったら、井沢と一緒に川を探してこい。後の者は着いてから俺の指示に従え。」
キャンプの言葉を聞いて隊員たちは安堵の息を漏らす。何度体験しても、それなりの緊張感を持ってして行動しているのだろう。笑みが零れる者もいた。
何より、TV局のスタッフがかなりバテぎみで、若林としては本来ならもっと先に進んでからキャンプを張りたい所だったのだが、実は早々に切り上げたのはこのTV局のスタッフの為でもあった。
「若林さん、助かります・・・。」
「まぁ、大変だろう。それだけの機材を持っていりゃあ・・・。」
カメラを持ったスタッフが苦笑いをする。
「まぁ・・・、でもこれも仕事ですから・・。」
「お前らも大変だな。ほんとにいるかどうかわからないようなヤツ相手に。」
「でも、まんざらウソでもないんじゃないですか?若林さんも聞いたでしょう?下の村での話。年に数回は現れるという人影を・・・。それに先ほども見つけた足跡。あれは絶対に原始人ですよ!」
その言葉に若林はつい先ほど見つけた足跡を思い出す。
確かにこの辺りはもう下にある村の人間でさえ入らない、いや入れない程鬱蒼としており、自分たちのようなプロでないと二度と出られないようなところである。
しかし、よくいう原始人の足跡にしては小さいのだ。探検家としての若林の判断だけという訳ではなく、一見しただけで人間のそれと判別がつきそうな足跡。
若林は考えた。
(もしかして、今まで見たことのないような小さなサイズの原始人か?それとも何か新しい生物か?)
まだまだ未知の生物がこの地球上にはゴマンといると信じて止まない若林だ。その為に仕事としては安定性のない探険家をやっているのだ。ただ、この日本に関しては信じてはいなかったのだが・・・。
ただ、もしこれが今だ発見されたことのない生物だったら、こんな大発見はないだろう。
文明大国日本での未確認生物の発見。こんな大チャンスは二度とないかもしれない。若林はそう考えると身震いした。


興奮していたせいだろうか。
その遥か遠くから眺める双眸があるのをこの時、若林はまったく気が付かなかった。








あれから3日が過ぎた。
初日に見つけた足跡。
それ以降、一向は全くといっていいほど手がかりを掴めなかった。
(くそっ!どういうことだ!!)
初日に覚えた興奮は、今は違う形で若林の表面に現れ出していた。
しかし、それを仲間の隊員たちに当てつけることをなんとか抑えてただひたすら歩いていった。
今だ見つからない原始人なる生物・・・。
やはり、あれは村人が見た幻か、はたまた動物と勘違いしたのであろう。そんな考えが脳裏を横切る。
今まで経験した探検にも、手がかりを見つけられずにひたすら歩き続けたことは過去何度とある。その度に(いや、絶対いる。未確認生物はいるんだ!雪男だって巨大魚だって、ついでに言えば生き残りの恐竜だっているんだ!)の信念は曲げたことはなかった。
しかし、今回はやはりいないのだろう。そんな気がした。なぜなのかはわからないがどうしてもそんな気がする。
そんな弱気を払拭するかのようにブンブンと頭を振った。
(いや、俺の信念はそんなたった3日間で曲げられるものではないはずだ!日本にだって謎の生物がいたっておかしくはないはずだ!!)
何度も何度も己に言い聞かすように呟いていた時だった。
一人の隊員が大声を上げた。

「隊長!!穴です。大きな下に広がる洞窟を発見しました!!」
ピンと若林の直感が訴える。
(それだ!!)
先頭を歩いていたその隊員を押しのけるようにして、若林は洞窟を覗き込んだ。
まるで地面がぱっくりと割れているかのように思える洞窟・・。
その直径はゆうに50mは超えるだろう。まだ、こんなところが日本にもあったなんて・・・。
若林は感嘆の息を漏らした。


「よし、その中に入ってみよう!まずは滝、お前からだ。」
一斉に隊員の動きが活発になる。
それに併せるかのようにTV局のスタッフも緊張した面つきで機材をいじりだした。


縄梯子を降ろし、最初に名前を呼ばれた滝から順にゆっくりと降りて行く。穴の壁はかなり抉れている為梯子は不安定に揺れているが、隊員たちは慣れた様子で降りて行く。
その穴は直径だけでなく、深さも半端ではなかった。かなりの長さを用意していた縄梯子が一本ではもう少しで届かなくなるところをなんとか上手く繋ぎ合わせて下に下りることが出来た。
地面はかなりジメジメしており、地上よりも湿気が多く感じられた。しかし、ほんの微かに陽が差し込む程度でそのほとんどが日陰になる為、湿度が高い割にはヒンヤリとした空気が周りに流れる。今まで地上で散々汗を掻いていたのがすっかり引いてしまった。どころか、とても涼しく感じられた。

「たいちょう〜〜〜〜〜〜〜!!底が深いですぅ。それに横にも大分広がっているようです。どうしますかぁ〜〜〜〜??」
2人ほど地上に残してあとは全員、穴の中に降りてライトなどの準備をしていたら、ひとりの隊員が横穴を発見した。
全員に新たな緊張が走る。
「なにっ!横穴か?どんな様子だ?」
若林が叫ぶようにして、横穴を発見した隊員に詰め寄る。
「それが暗くてよくわからないんです。どうしますか?」
う〜〜〜む。と若林は唸った。
今までの経験から大概このような大穴は、迷路のような洞窟になっていて、しかも危険が伴う生き物が潜むことが多い。生物が暮らすには到底適していないと思われてもだ・・・。
「よし。じゃあ、井沢はここで暫く様子を見ろ。俺と来生と高杉、それとTVスタッフは中に入ろう。暫く進んで大丈夫のようなら、無線で知らせる。後から来い。来生、ライトの準備はいいか?」
若林は隊員たちに振り返る。
「はい。他の物も一通り全部用意しました。」
来生は緊張した面持ちで返事をした。TV局スタッフもそれに同意するように頷く。
「よし。出発!」

ぴちゃぴちゃと水の跳ねる音が穴全体に響き渡る。音響の仕方からただの洞窟でなく、鍾乳洞になっていると思われた。案の定、暫く進むと幻想的な光景が眼の前に広がってきた。
「おお〜〜〜〜っっ。なんて素晴らしい・・・・。」
探検隊全員から感嘆の声が漏れる。皆がヘルメットに着けているライトの光に反射して蒼く、いや翠にも見える美しい鍾乳石が次々に現れた。
「これはすごい・・・。」
「こんな綺麗な鍾乳石は見たことがない・・・。」
「ぜひ、カメラに収めなくては。」
一同が足を止めてその美しい鍾乳石に眼を奪われていると、何やら奥の方からコトリと音が聞こえた。
石でも転がったのだろうか・・・。
しかし、瞬間、若林は何か予感めいたものを感じた。
「おいっ、これちょっと持ってろ!」
そう手にしていた荷物を後ろの者に乱暴に手渡すとまるで何かに駆られたように猛ダッシュで奥へと走り出した。
「あっ、隊長〜〜!!」
あまりに速さにカメラは追いつく事さえ出来ない。後ろの方からどたどたと何人かが追いかけてくるのが足音で分かったが、そんなことは無視をしてそのままさらにスピードを上げた。
しかし、足場が悪く思うように走れない。はぁはぁと息が荒くなる。
(何かいる!!)
若林はその経験上からか、はたまたそういった才能があるのか、大概こういった直感は外した事がなかった。
一瞬、ライトが当たった前方に影が見えた。影は奥の方へと逃げていった。
「いたっ!!」
影はなかなかの脚の持ち主のようで、以外にも距離が離されているのがわかった。
(くっそ〜〜〜〜!!逃がしてたまるか!!!)
早いスピードで逃げる影を逃がさないように前方に神経を集中する。

ズルッ!!

その影が足を滑らせたらしくゴロッと大きな音が辺りに響いた。
(チャンス!)
一気に距離を縮める。
しかし、注意しなくてはいけないのは、相手が謎の生物ということ・・・。どんな暴挙に出るかわからない。スピードを落とさずに尚且つ用心しながら近づいた。
その生物はケガでもしたのだろうか、その場から動こうとはしなかった。微かにうめき声も聞こえた。
「よしっ、もう逃げられないぞ!!」
そう叫びながら、ロープを握る手に力が入った。
その生物はもはや諦めたのか、若林の姿を見ても暴れる素振りは見せなった。

近くまできて、一度立ち止まる。ぼんやりと浮かぶ影はどうやら人の形をしているようだった。
(やはり原始人なのか?いたんだな・・・。まだこの日本にも・・・。)
その人型を見て今までにない興奮を体に覚えた。新たな生物発見の報道記事が目に浮かぶ。
一歩一歩ゆっくりと近づくたびにさらに興奮度が増して行く。鼻息が荒いのが自分でもわかる。なんとかその興奮を押さえながらゆっくりと行動する。
暫くすると、後ろの方からも叫び声が聞こえてきた。他の隊員やTVスタッフが追い付きつつあった。

チラッとライトの明かりがその生物の頭部に当たった。
暗闇の中の割には薄く綺麗な光がそこから反射した。頭が動くとサラッと音が聞こえたような気がした。
(茶色の毛・・・?もっとサルに近いイメージがあったのだが・・・。)
薄明かりの中、普通の人間にも見えるが服は着ていない。しかも全裸に関わらず恥かしがる様子もなかった。その様相からただの村人が紛れ込んだ事は考えられなかった。場所を考えてもそれは容易に想像は付くが・・・。
一体どんな原始人かとドキドキしながらさらにゆっくりとした動作で用心しながら相手の肩に手を掛けた。ここで油断して攻撃されてはかなわない。
しかし、以外にも相手からは攻撃の意思が感じられなかった。それどころか微かだが怯えているようだった。体が少し震えている。
(・・・・・???)
若林の手にビクッと反応し、首がゆっくりとこちらに向けられた。。

(!!!)

その振り返った容貌に若林は目を見開いた。

薄暗い洞窟の中、しっかりと輪郭を捉えることはできないのだが、それでもわかるその人物の美しい姿。どうやら男の子らしいが女の子と見間違えそうに綺麗な顔つきで、年齢もまだ少年を脱していない頃に見えた。
(原始人どころか天使がそのまま天上から落りてきたようだ・・・。)
一見した限りでは確かに日本人に見え、この近くの村人と言われれば納得してしまうほどしっかりと人間なのだが、その容姿からはどこかそんなことを感じさせないものがあった。
洞窟の中でずっと一人で過ごして居ただろう為に、手入れのされていない髪の毛は、しかし綺麗な薄茶色をしていてきちんと手入れをしてやればサラサラと音がしそうなほどで、零れ落ちるだろう質の良さそうな髪だ。瞳はクリッとしていて大きくとても愛らしかった。ライトに反射する肌の色は人とは思えないほど白く艶やかさを感じ、丁寧に風呂で洗ってやりたくなってくる。手足もすらりと伸びていて多少の傷はあるものの綺麗だった。先ほどの逃げ足の速さからわかる運動能力の良さのせいか、体全体も余計な肉は付いておらず均整の取れたものであった。
若林は、しばらく呆然を彼を見つめてしまった。
後ろからも「ほぅ・・。」と声が漏れる。
気が付けば、他の隊員たちもすぐ後ろに並んでいた。カメラは呆然として、回すのを忘れてしまっているようだ。
漸く我に返った若林は、相手が驚かないように優しい声音で声を掛ける。
「誰だ・・・。お前・・・・。」
その言葉にキョトンと首を傾げる。
なんともかわいらしい仕草に見ているこちらが赤くなってしまう。
ただ・・・。
「・・・・・・ぁぁ・ぅ・・??」
声ともつかぬ声を上げた。
「何だ?声が出ないのか?」
「??・・・・・うぅ・・・あぅ・・・?」
どうやら言葉が話せないらしい。回りが一斉にざわめく。
若林はわからないだろうと思いつつも、驚かないように優しい声音を変えることなくその少年に話しかけた。緊張しているのか少し青白くなった彼の頬に手を添えて。
少年は少しビクつきながらもそれを許容している様子だった。
「大丈夫だ、心配はいらない。ここから、君を出してあげよう・・・。」
優しい微笑みを見せながら。
その笑顔に緊張が取れたのか、天使のような少年はつられるようにニッコリと笑顔を浮かべた。












「新聞を調べた結果、あの辺りで飛行機事故とか子どもの行方不明者の記録はありませんでした。やはり彼は原始人と見ていいでしょう・・・。」
「そうだな・・・。」
今、若林と話しているのは、最初若林に探検の依頼をしたTVプロデューサーだった。
「それにしても不思議ですね。あんな子ども一人で・・・。結局、彼以外見つからなかったんでしょう?」
「あぁ・・・。」
「親とかはいなかったんですかね?それともまだどこかに潜んでいるとか・・・?」
「さあな・・。」
「まぁ、でもおかげで今度の『火曜日スペシャル 若林源三探検隊特別番組――日本の密林に原始人を見つけた!!――』は高視聴率まちがいないですよ!!多分過去最高いけるんじゃないですか?なんせ本物の原始人ですからねぇ〜。あの子には悪いがいい番組にさせてもらいますよv」
ほくほくしながらTVプロデューサーは捲し立てた。以前と同じネクタイに手を絡めながらニコニコしている。相変わらず訳のわからない言葉を使って若林を囃し立てるのも忘れない。
しかし、若林はそれに気のないような返事を返しながらも、それなりにプロデューサーの言葉がちゃんと耳に入っているのか、しだいに眉間に刻まれていた皺が深くなってきた。ただその皺には気分を害したものばかりではない何かを表わしていた。
「なぁ・・・・。」
「何でしょう?若林さん。」
「あの子・・・。」
「はい?」
「あの子ども。どうなるんだ?」
「あぁ・・・。いくら原始人とは言っても元々は人間ですからね、動物園というわけにはいかないでしょう。多分、どこかの施設にでも連れていかれるのではないですか?彼はある意味、いい研究材料ですからね。これで番組が放送されたらまた忙しくなりますよ。問い合わせが多いのは想像に難くないですからね。」
その言葉を聞いて、若林はさらに険しい顔つきになった。その様子に釣られて相手プロデューサーも訝しい表情になる。
「どうしたんですか?若林さん・・・。あの子が一体?」
どうしたというのか、若林は相手に返事もせずに暫く何か考え込むようにして黙り込んでしまった。それにどうしたらいいのかとウロウロしていたプロデューサーが、ビックリして机にぶつかるほどの勢いのある声が突然上がった。
「よし!決めた!!」
「うわっ!!・・・・・・・・・。一体どうしたっていうんですか、若林さん??そんな大声出して。びっくりするじゃないですか・・。」
そのあまりの勢いに一体何事かとビクビクしながら若林に声を掛ける。若林は、ぶつけた膝を摩りながら不思議そうにするプロデューサーに詰め寄る。
「おいっ。あの子は今どこだ!?」
「あ・・・・。あの・・・え〜〜〜〜っと、今はTV局と契約をしている研究所の施設にいますが・・・・。」
「そこへ案内しろ!!」
プロデューサーの襟元を締め上げながら、若林はそれが無理な要求だろうがなんだろうが押し通すことを決めた。あまりの勢いと首が絞まる苦しさにプロデューサーは震え上がる。確かに探検家、若林は、そんじょそこらのサラリーマンには到底太刀打ちできないほどの腕力の持ち主でもあった。すでにプロデューサーの足は地に着いてない状態で、これ以上締め上げたら口から泡を吹くのではないかと思えるぐらいであった。
「あ・・・・あの・・・・・・。どうするつもりで・・・・。」
声になるかならないかの弱々しさでもなんとか質問してみる。
「もらうんだよ、あいつを!原始人だろうが、なんだろうが、あいつは俺が見つけた。俺のもんだ!誰にも渡すつもりはない。」
口角をニッと上げながら若林は相手の目を睨みつけた。
「ヒイィィィッッ!!」
半ば空中に浮いていたプロデューサーをソファのドカッと投げつけるとさらに凶暴な顔つきになった若林はもはや脅迫にしか聞こえない声と言葉を投げつける。
「その施設とやらに案内しろ!」
「はああぁあいっっっ!!」











後日、番組は放送されかなりの反響を呼び、一部では「あれはウソだ。やらせだ。」の声も上がったが、それだけ話題と言えばそれしかないと思えるほど人々を驚かせた。

しかし、『人のうわさも七十五日』。
話題になった原始人も、当人が行方不明になったとかですぐに人々に忘れられる事になる。








5年後、若林探検隊には、片言しか言葉が話せないのだが『岬』という名の優秀でかわいらしい隊長の助手が同行するようになった。






END





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コメント:すみません〜〜〜。(土下座)
あまりのくだらなさに、今涎がでちゃった。(なんじゃ、そりゃ)
って、これ以前、某TV番組を見て思いついたんです。(見た人いますか?)って私は途中で寝ちゃったんだけど〜。(おいっ)
昔は川○隊長だったんですよね。河○隊長でしたっけ?最近は元正義の味方ですよねvv俳優さんがやるとどうも胡散臭くて〜。(でも、スキですvvあ〜いった番組)
でも、ごめんね、岬くん。原始人にしちゃった。・・・原始人岬・・。(笑)全裸ってとこがちょっと萌え?