南葛学園物語−2− (天才・大空翼)
「俺、大空翼。よろしくねvv」 「僕は岬・・・岬太郎。こちらこそよろしく。」 入学式も無事に終え、教室に入って各自好きな席に着いている。 ありがたい事にクラスも一緒なのを発見し、若林は隣に座ろうと岬に向かった。 瞬間、ドカッと彼の横に陣取る輩を目にした。 (あっ、ああ〜〜っ!岬の隣座りやがって!!俺が行こうと思ったのにっ。誰だ、あいつ!!) 教室入り口で固まって皆の出入りをふさいでしまった若林は、まだ廊下にいたクラスメイトのブーイングを浴び、ようやく我に返った。 (隣がダメなら後ろだ〜〜〜っ!!) 何気ない風を装いながら、それでもあわてて岬の後ろの席に座った。 「よ・・。よお、岬。クラスも一緒だな、ヨロシクな。」 「あ、若林くん。」 岬に親しげに話し掛けているヤツを無視するようにして若林は岬に声をかける。 「あれ?君たちふたり、知り合い?」 翼が不思議そうに尋ねる。 「うん、寮が同室なんだ。」 「え、どの棟?俺、東棟だけど・・・」 「えっとぉ、南棟だったっけ?」 「そうそう、南棟。」 「ふーーん。」 なんとなしに翼は、ジロジロと若林を見やる。その視線を受けながら、若林は嫌な予感を感じずにはいられなかった。 「なんで部活も一緒な訳?」 と大空翼。 「さぁ?」 と空を仰ぎ見る若林源三。 本来なら部活動も初日から参加する1年生はほとんどいないのだが、不思議と又、3人共一緒にサッカー部の部室の前に立っていた。 「あっ。」 と突然、岬太郎が声をたてた。 「サッカーの大空翼って、あの中学全国大会3連覇を成し遂げた、あの大空翼くん??」 それを聞いて翼はニッコリとする。 「俺の事、知ってるの?うれしいなvv岬くんもサッカーやるんだね。一緒にがんばろうね。」 「え・・・う・・うん。僕、翼くんについていけるかなぁ・・・。」 「おいおい、俺の事もお忘れなく!」 「あ、ごめんごめん、若林くん。若林くんのポジション・・・って??」 「GKだ!これでも俺、ドイツで結構修行積んできたからなぁ。翼には負けないつもりだゼ!」 知名度の違いは日本の大会には出ていないのだからしょうがないかなと、内心若林は苦笑してしまった。 「へぇーーー凄い、ドイツって!お父さんの仕事の都合?」 「いや、実はサッカー留学なんだ。だから翼が全国大会3連覇なんだか、得点王なんだか知らんが、俺の方だってたいしたもんだと思うぜ!」 「ふ〜〜ん。」 ふたりの会話を聞きながら、またしても翼は若林をニラムのだった。 それに気づいてないらしく、岬は感心したように、 「凄いね、ふたりとも。さすがスポーツで有数な南葛学園。僕なんかじゃ、ダメかなあ。ただサッカーが好きなだけって事でここに来たんだけど・・・・・・」 「そんなことないよ岬くん、大丈夫だよ。それが1番大事な事なんだから。」 「うん。そうだね。ありがとう。」 お互いニッコリするふたりに、若林はもやもやした気分になるのだった。 案の定、翼の言うとおり何も心配はなかった。 岬もふたりに負けず劣らずの実力の持ち主で、後から入ってきた1年生をよそに1週間もたたないうちに3人ともすぐにレギュラーメンバーと同じメニューで練習に参加していた。 「岬くん。すごいじゃないか。岬くんのパスやセンタリング、俺の思った所にくるんだもん。いろいろ考えなくても自然にボールが出し合える相手って岬くんが初めてだよ!」 「ありがとう、翼くん。実は僕もそうなんだ。何故だろう、翼くんのパスがどこに来るかわかるし、僕もどこにボールを出していいかなんとなくパッとイメージがわいて・・・。」 不思議な表情をする岬に翼は続ける。 「僕達もしかして生まれる前、恋人同士だったかも−−−−。」 一瞬キョトンとしたが、すぐに笑いながら岬も答える。 「あっははははは−−−−−。そうかもね−−−−。」 (何故否定しない・・・、岬・・・。) 横でドリンクを飲みながら、若林はふたりの会話を聞いていた。・・・が、会話に参加する事ができずにいた。 (翼のヤツ。何が恋人同士だ〜〜〜〜〜っ!!岬も岬だっ。一緒になって笑って・・・。岬が生まれかわりなんて信じるとは以外だったな。しかし、生まれ変わる前、岬と恋人同士だったのは俺だぜ、多分。・・翼は、岬と俺がデートで待ち合わせの時、公園の草陰にいた蛙だよ。) 「ところで若林くんも、さすがドイツに留学していただけあってスゴイね。すぐにレギュラー取れるんじゃない?」 勝手に話を作り替えて自己満足していた若林は、ボーッとしていたところに突然話を振られ、あわてて横に置いてあったスポーツドリンクをこぼしてしまった。 「あっ、やべえ・・・」 「はい、若林くん、タオル。大丈夫?」 はいていたジャージを濡らしてあたふたする若林をよそに、岬は冷静に倒れたドリンクを置き、首に掻けていたタオルをさっと若林の足元にあてる。 「もう、若林くんって結構ドジなんだね。予備のジャージ持ってる?持ってなかったら、僕、休憩時間の間に部屋へ戻って取ってくるけど・・・。」 (岬、もしかして俺のこと・・・・。よく自分のものと一緒に俺のも洗濯してくれるし、朝は起こしてくれるし、・・・岬っ!俺、期待しちゃうゾッ!!) ジャージを拭いてくれる岬を見ながらニヤニヤしていた若林にするどい視線がささる。 (・・・・・・!!) 目が合った瞬間、相手の口から冷たい言葉が放たれた。 「岬くん、何もそこまで岬くんがすることないよ。若林くんが自分でドリンクをこぼしたんだから・・・。ねぇ、若林くん。早く自分で行ってきたら?」 「そ・・・そうだね、翼くん。ごめん、若林くん。子ども扱いしちゃったみたいで。自分で行くのが本当だね。まだ今なら間に合う時間だから行ってきたら?」 「お・・・おう、そうだな。ちょっと急いで着替えてくるわ。」 なかなか緩まない翼のするどい視線を浴びながら、若林はゆっくりと立ち上がったかと思うと、今度はもう時間がないかのように猛ダッシュで駆けて行った。 (俺の考えが甘かったのか、翼の口が上手なのか・・・。せっかく岬が優しかったのに、何なんだっ!ちくしょ〜〜〜っ!!翼なんて翼なんて東棟のくせに〜〜〜っ!!でも席は隣・・・。今頃ふたりの会話、弾んでいるんだろうな・・・。クーーーーーーーッ!!) 一層スピードが増す若林だった。 END |
コメント:はい、第2弾です・・・。登場しました、天才くん。やはり、彼がいなくては話が進まないでしょう。(ホントか??)
まあ、ささっこの脳内では『彼はこの試合のキーポイント』(by三杉)なので・・笑。
この先3人はどうなるのか?待て、次回!!(って、誰も待ってないよ)
って、サイトがサイトだから結果みえてる??いや、期待を裏切るということも・・・。(おい)