朝焼けを共に(中篇)
いつもと変わりなく、いや、いつもよりも海が穏やかだろうか。空は快晴で、気温も暖かく気持ちいい。 ルフィは、メリーに座り、水平線を眺めていた。まだ、島は見えない。 「あ〜。早く島に着かねぇかな〜〜〜。」 ぐらり、と身体が傾いてしまう。ここ最近、平穏な日が続いているから身体がなまってしまいそうだ。ゾロのように鍛錬でもすればいいのだろうが、やりたいとも思わない。 「新しい遊びでもないかな〜〜〜。」 何かと発明品を作るのが得意なウソップは、新しい遊びを見つけるのも得意だ。元々、育った島では小さな子どもを相手に遊んでいたからなのも理由なのかもしれない。 そのウソップ相手に何かしら遊びをしようと、立ち上がって背を逸らすと、反転した視界にゾロの姿が目に入った。 「お、どうした?ゾロ・・・。」 何やら表情が冴えない。普段からあまり感情を表に出さないので表情の違いはわかりにくいが、一緒に旅をするようになって、彼の表に出さない感情もはっきりとまでとは言わないが、それでもいつもと違う時はわかるようになっていた。それはもちろん、ゾロに限ったことではないが。 「いや・・・。何でもねぇ・・・。」 語尾が小さくなっていく。らしくない。 暇だしなぁ・・・・。 ルフィは、仲間が困っているのなら、とぴょんとメリーから飛び降りた。遊びではないが、時間を潰し方を見つけた。 とはいえ、面白半分に聞いてはいけないことならば、自分の出る幕ではないかもしれない。深刻な内容ならば、ナミやウソップが出番だろう。まぁ、ナミならば高額な相談料が請求されるので、ナミに相談というのもないだろうが。 どちらにしても兎も角、ゾロに聞いてみないとわからない。 「らしくねぇ顔してるぞ!話したらスッとすんかもしんねぇしよ。俺、聞いてやるからよ、話してみろよ!」 ルフィの方こそあまりにもらしくないことを言うので、ゾロが目を見開いてルフィを見つめた。 ニシシと笑う顔はいつものルフィだが、普段から人の話を聞くということがない、いや、人の話を聞かなければならない場面でさえ聞かない船長の言葉に驚きを隠せない。よほど暇なのだ、ということがありありとわかった。 暇潰しにされちゃあな・・・。 「折角だが、結構だ。」 ゾロは一瞬苦笑したが、話をするつもりはないようだ。 ルフィは、チェッと口を尖らせる。が、ルフィも自分が相談相手に向いていないのは自覚済みなのか、それ以上は聞くつもりはないようだ。 「じゃあ、ウソップと遊んでくるからよ。元気だせよ!」 屈託のない笑顔は本当に太陽のようだ。それだけで、癒されるというものだ。 一見、何も考えていないようで、事の真理をついていることが多い、本能のみで突き進む船長。 彼のおかげでどれだけの人間が救われたことか。 下手にウソップとかに話すよりもよほど明るくなれそうだ。 もちろん、ゾロとしても誰かに話つもりはなかったが、それでもふと過った。 と、同時に。 「ちょっと待て、ルフィ。」 言うつもりのなかった言葉が自分の口から出たことに自分で驚いた。 「話、聞いてくれるか?」 「お!いいぞ。俺は船長だかんな。頼ってくれ!」 走り去ろうとした身体の向きをくるりと変え、ルフィはゾロの傍に走り寄って、そのままゾロの隣に座り込んだ。ナミ達も今は部屋に籠っているのか、誰も視界には入らなかった。 それに安心したのか、ゾロもルフィに並んで座り込み、キッチンに視線をやりながら口を開いた。 ゾロの口から聞いたのは、意外や意外。 ゾロのサンジへの気持ちと、彼への告白。そして、わかってはいたが、やはり断られたという話だった。 正直、驚いた。 最初こそ、性格も考え方も生き方も、全てにおいて正反対の二人だったが、一緒に旅を続けていくうちにお互いの芯の部分を理解したのか、本当に仲が悪いわけではなかった。回りから見ても合わない訳ではないことがわかった。 戦闘の時は息もピッタリだし、サンジの料理をゾロも口にこそしないが旨そうに食べている。ケンカだって、確かに切欠は些細なことばかりだが、お互いにコミュニケ―ションとして楽しんでいるのもわかった。お互いに信頼関係がしっかりと出来上がっていると思っていた。 ただ、それは仲間としてだと思っていた。 「俺も自分で驚いている。でも、惚れちまったもんは仕方がねぇ。」 「そうだな!」 ゾロの言葉にルフィもニシシと笑って答えた。 驚いたが、怒ることでも、嫌悪することでもない。 仲間が仲良くなることはいいことじゃないか。ルフィはそう考える。 でも。 「でも、サンジは、そう答えたのかぁ〜。」 「普段はへそ曲がりだしおちゃらけてはいるが、肝心な場面では真摯に向き合う奴だ。」 ポツリとゾロが呟いた。 胡坐の上で頬杖をついてルフィはキッチンを見つめた。サンジはずっとキッチンに籠っているのだろう。 サンジもまた、ゾロの言葉にぐるぐると頭を巡らせているのかもしれない。 「わかっちゃいたが、正直、こんだけ落ち込むとは自分でも思わなかった。だが、サンキューな!話を聞いてくれて、多少気分が晴れた。これからは仲間としてまた上手くやっていく。船長に迷惑を掛けねぇよ。」 「待てよ、ゾロ。まだ話は終わっちゃいねぇ。」 「よいしょ。」と立ち上がろうとしたゾロの腕をルフィは掴んだ。 不思議な顔をするゾロをルフィは見上げた。 「サンジにフられたんならよ、俺じゃダメか?」 「は?」 ルフィの笑顔に、ゾロは固まってしまった。 |
10.03.16
話がちょっと戻る感じかな。ルフィが出張ってしまいました・・・。サンジ出て来ず・・・すみません。