永遠の思いはあるのか2
ゾロは見えないようにため息を吐いた。 ナミには、どこか思惑があったようにも思える告白だった。 その思惑がどういったものかわからないが、なんとなくゾロには勘めいたものを感じる。 ナミがここでゾロに対して本気で告白したのは予想外だったが、でも、ナミなりの考えがあっての行動であるし、もともとナミがゾロを本気で好きなのをゾロは知っていた。 仲間として一緒に船に乗った最初の頃は、あまり女性としての仕草は敢えてしていなかった。それは、男連中の中でたった一人の女性ということで、皆に仲間として認めてもらいたいからだったのか、それとも長い間、海賊専門の泥棒という職業めいたものからなのか、それはわからないが。 それが、航海が進むにつれ、所々に女性らしさを見せるようになった。しかも、それは皆が揃っているところではなく、ゾロの前でということがほとんどで・・・。 なんとなくだが、ナミの仕草の変化に気が付いていたゾロは、勘という程度だが、ナミの心の変化を感じていた。気が付いた最初の頃は言葉で表すことはできなかったが、それでも、ナミがゾロに何かを訴えているのがわかった。 そして、その変化が好意というものだということが、漸くわかったのも最近のことなのだが。 ナミのゾロに対する気持ち。 わかっていたが、ゾロはそれに答えるつもりもなかった。 何故なら。 何故なら、ゾロにはすでにもう、心の中に別の人間が存在しているから。 それは、ゾロにとっては意外でしかなかったし、気が付いたときはかなり自分でも驚いたのだが、それでも受け入れるしかないほどゾロにとっては真実だった。 自分がこんな心を持っていたのが、かなり驚きだった。 ただただ高みを、大剣豪の野望を持つ、修羅になって突き進むのみとばかりに自分でも思っていた。 人の心を捨てたわけではないが、夢の為には、ある程度の犠牲は必要と考え、余分は感情は切り捨ててきたつもりだった。 それが、一体どういうわけか。 まだまだ、人並の感情が残っていたらしい。 しかも、人を好きになるという野望とはとてつもなく、かけ離れた感情。 しかし、それを捨てようとはゾロは思わなかった。逆に、こんな人間でも持てる感情ならば、大切にしたいとさえ思った。 サンジを愛する気持ち。 そのきっかけは何だったのかはもう忘れてしまった。 気が付いたら・・・なのだ。別にそれでもいいとゾロは思う。きっかけは、それほど大切ではない。今の気持ちが大切なのだ。 いつもいつも女性陣には、必要以上のサーピスをし、男性陣には、必要以上に厳しい。 しかし、根底は誰にも優しいこの船のコック、サンジ。 今だ接触はケンカが中心で、名前も呼ぶことはないけれど。 それでも、相手を認め、ライバル視し、大切な仲間だと思っていた。 それだけだと思っていた。のだが、どこがどう狂ったのか? 気がつけばサンジの行動が気になるようになっていた。仕草が気になるようになった。いつもサンジの料理を食べたいと思うようになった。 しまいには、サンジの料理だけでなく、サンジまでもを喰いたいと思うようになった。 あの女性を称える口を塞いで、自分を讃えるセリフを吐かして。 俺にはお前しかいない。と、言いたかったし、言わせたくなった。 が、なにせ相手は世界一の女尊男卑の男だ。 どれだけ自分が相手を想おうと、叶うはずのない想いだと思っていた。 だから。 だから口にして、仲間としての地位さえなくすぐらいなら一生いい仲間のままでいたいと思っていた。 が、ここに来て情勢が変わった。 ナミの告白。 この船において少人数でグランドラインを渡ることは、仲間の連結は不可欠だ。結束は固ければ固い方がいい。 ちょっとしたヒビが入れば、たちどころに船は海の底に沈んでしまうだろう。 だからこそ、本当に嫌っていれば、例え船長のスカウトだろうが、コックのことは船に乗せなかっただろう。真っ先に反対した。 が、見た目にはケンカをしようが信頼しているからできるケンカだし、一緒に船で航海している。 結局は、最極端の感情を持ってしまうのだが。 その為、船の調和を乱さないように相手に対して恋愛感情を表に出さないようにしていた。 もし、お互いが最初から両思いだということがわかっていれば話は別なのだろうが・・・。 下手に相手に告白してギクシャクして船の輪を乱すことはしてはいけない。ましてや、それが三角関係などに発展するなどもってのほかだ。 この船にはそういった暗黙の了解があったはずだ。 だからナミの視線にも気が付いていたのだが、知らない振りをした。 そして、自分ももちろん別の理由があるにしても、サンジに想いを伝えるつもりはなかった。 それなのに。 ナミには自分の視線の先などわかりそうなものなのに。 一体どういうつもりなのか。 ゾロにはわからなかった。 |
06.07.06
相変わらず進まず・・・。