永遠の思いはあるのか17
ナミがゾロに向かって口を開いた。 「ゾロ、貴方を捜して島に2週間ほど滞在したわ。でも、結局見つからなくって、泣く泣くあの島を離れたの・・・・。」 「そりゃあ悪いことをした。俺が助けてもらった時はほどんど気ぃ失っていたからな。俺が気が付いたのがその海賊船に乗って新たな島に着く直前だったし、日にちもかなり経っていたからどうする事もできなかった。・・・・だが、いつか会えると信じていた。」 ゾロは、心配かけて悪かったと改めて頭を下げた。 「この子は、貴方の子よ、ゾロ・・・・。男の子で2歳を越したわ。言葉も少しずつだけど覚えてて、とっても元気よ。貴方にそっくりってみんなが言ってくれる。」 手の中にある子どもの頭を優しく撫でながら、ナミは微笑む。 懐き具合から主にサンジが面倒を見ているように思えたが、ナミの穏やかな顔を見ると、普段は男勝りの部分もあるがそれでも彼女が母親なのだと痛感する。 「この子がお腹にいることがわかった時はみんなを驚かせてしまったけど、でも、誰もが喜んでくれたわ。特にサンジくんが一番喜んでくれたの。・・・すごく嬉しかったし、だから・・・絶対産むんだって思った。」 ナミはサンジを見上げて微笑んだ。サンジは笑みながら肩を竦める。 「ナミが子どもを宿しているのがわかったのが、無人島を離れて一ヶ月してからで・・・。ちょうど大きな島に着いたところでな。生まれるまでその島にいるつもりだったけど、ナミが大丈夫だというから、旅を続けたんだ。」 「もちろん、不安定な時期や出産の時期は島で停留するようにしたけどな・・・。」 チョッパーの説明にナミはごめんという。 「チョッパーにはかなり迷惑を掛けたと思ってるわ。」 だが、一人前の医者であるトナカイは自慢気に胸を張る。 「けっこう丈夫な子だったからな。少しでも流産の危険があれば止めたけど、なにせゾロの子だ。時化の時でも大丈夫だったな。」 今でこそ笑う事ができる話だが、その時はかなり大変だったのがその表情でわかる。 笑顔で話せるのは、もはや過去のこととして受け止めているのだろう。 「苦労かけたな。」 何も知らなかったとはいえ、ゾロは仲間達に申し訳ないと思う。 理由が何であれ、経緯がなんであれ、多大な迷惑をみんなに掛けたことは否めない。 「ナミにはいつもサンジがついていたからな。」 チョッパーが誇らしげにサンジを見上げた。 その当人は、今だ煙の流れない煙草を咥えている。が、いつの間にか、流しで食器を洗っていた。 いつの間にか食べ終わった皿が片付けられていて、机の上は綺麗にされている。 「プットは悪戯小僧だからな。さっさと片付けないと、皿、割られちまう。」 後ろを振り向くことなく、笑っている。 言葉では笑っているが、赤ん坊を海賊船で育てるのは容易ではないことは、ゾロでもわかる。普通の陸で生活している時でさえ赤ん坊を育てるのが大変なのは、昔、子育てに追われていた村の人々を見ているからわかることなのか。 しかし、それを感じさせる事のない様子でナミがプットを抱いて立ち上がる。 「もうミルク終わったでしょう?着替えましょう。」 ベビーベッドにプットを運び、汚れた服を脱がせだした。 何だかんだ言ってナミも母親らしく世話を焼いている。それがゾロには意外だった。が、この船の今までからすれば当然のことだろう。 それだけこの子どもは愛されていると知る。 「てめぇにも迷惑を掛けたな・・・。」 席を立ち、サンジに向かって頭を下げようとしたら、あまりの速さでサンジの足が飛んできた。 「大事な大事なナミさんの子だ。てめぇの為じゃねぇ!」 そう睨みつけられるが、自分のためでもあることは、言葉にしなくとも勘でわかった。 プットの方もサンジに懐いている。 今だってプットは、ゾロには不安気にチラチラを視線を送っているだけだが、サンジに対しては絶対の信頼の瞳を向けている。サンジが乱暴な仕草をしてもそれは変わることがない。 軽く足技をかわすと、サンジは「チッ」と舌打ちして食器洗いに戻った。 「もう!久し振りに再会したと思ったら、もうケンカ?」 ナミがぷぅと頬を膨らました。 「子どもの教育に良くないわ!」 「ごめん。ナミさん・・・。」 ナミに頭が上がらないのは全く変わらない。 ゾロは席に再度着き、肘を突いて相変わらずだ、とため息を吐いた。 一通り食器洗いが終わり手を拭くと、ふと思い出しように改めて、ゾロに向き直った。 「プットはてめぇの子だ。今後、てめぇが面倒を見ろ。それが父親の役目だ!」 「ナミだって母親なんだろう?ナミももちろん面倒を見るんだろう?」 「ナミさんには、航海を順調に進める使命がある。てめぇは、どうせ戦闘の時しか役に立たない極潰しじゃねぇか。てめぇがプットの面倒を見るのが当たり前だろうが!」 ゾロは若干、ムッときたが反論できるわけがない。頷くしかなかった。 プットの方はといえば、サンジの刺のある物言いに意味がわからなくても、何かしら感じるところがあったのだろう。 ベビーベッドに落ち着いていたが、不安気に顔を歪めて、サンジの方へと手を伸ばした。 「ぱぱ・・・・。」 サンジ「がどうした?」とプットに近寄ると、ぎゅっと、幼子はサンジの着けているエプロンの裾を握り締めた。 下から見上げられて、サンジは目を細めた。 「何にも心配はいらねぇよ。ちゃんと俺もいるから・・・。」 その顔は誰よりもその幼い子どもの父親だった。 本当の父親であるゾロがいない間、ずっとサンジはナミと赤ん坊のプットを支えてきたのだろう。 みんなで育てたと言いながらも、誰よりも子どもが懐いていることがそれを証明している。食事を与えているということで、特に関わりを持つ回数が多いのは当たり前だが、回数だけではない。 サンジのことを『ぱぱ』と呼ぶほどに懐いている子ども。 その子どもを見ていれば、サンジがどれだけゾロとナミの子どもに手を掛け、可愛がり、愛情を注いできたかわかるというものだ。 普通では他人の子にそこまで愛情を掛けることができないだろうに。 ゾロは自分は子育てに向いていないのは、考えなくても容易にわかる。サンジは本来の父親であるゾロ以上に愛情を注いでいるように見えた。 どうしてそこまで愛情を注ぐことが出来るのか。 もって生まれたサンジの性格だから? ナミの子どもだから? ゾロの子どもだから? 二人の子どもだから? ゾロの子どもだからだったら、嬉しいだろう。と、ふとゾロは思ってしまった。 ベッドから抱き上げて、我が子のようにあやすサンジについ目がいってしまう。 もしかして、いつも女神のように讃えているナミよりも大事にしているのではないだろうか。 愛しい愛しい我が子のように接するサンジ。 その様子を見て、ゾロはこの子どもがサンジと自分の子どもだったら・・・・、とありえない想像をしそうになり、慌てて頭を振った。 |
07.02.25
書いてて何だか複雑な気分になってきた・・・。(でも、あくまでゾロサン!)