永遠の思いはあるのか6




ゾロが出て行って、部屋の温度が一℃は下がったようにサンジには感じられた。

結局どうすればいいのかは、わからなかった。
が、唯一つわかったことがあった。
それは、楽しいはずの夜の一時は、これで二度と行う事はないだろうといことだった。
これから先の航海が、どれだけ夢にあふれてて希望に満ちていて楽しいものでも、心からそれを味わうことが出来ないだろう、と思えた。
それは、ナミも同様だろう。
一度は落ち着いたように見えた様子も、今はまた、暗く落ち込んでいるように見える。
俯く頭からは、表情は見えなかった。

「ナミさん・・・。」

サンジはナミを呼んだ。が、ナミは返事も顔を上げる事もなかった。ギュッと拳を握り、俯くだけ。

「ナミさん。」

再度、サンジはナミを呼ぶ。このままここにいても仕方がないよ、と声を掛ける。
暫くの間、沈黙が続いたが、それに呼応するように、大きくはぁっ!と息を吐く音が響いた。

「まいっちゃうな〜〜〜〜、ホント!」

声と同時に顔も上げる。
それは、何かを悟ったのか、先ほどまでとはうって変わって笑顔だった。

「ゾロもサンジくんも・・・・。」
「何?ナミさん?」

ナミの言う事がわからないサンジはただただ何度もナミの名前を呼ぶしかなかった。

「両想いじゃない!!」
「ええっっ!!!」

思いもよらなかったナミのセリフに、今まで以上にサンジは声を荒げた。

どうしてそういう結論になるのか。
ゾロは確かに、サンジに好きだ、と告げた。それは、本人の口から出たので間違いはないだろう。

が。

それに対して、サンジからは何も言わなかった。ゾロも答えは聞かない、わかったと言った。
だから、きちんとした回答は誰にも言っていないし、わからないはずだ。
それだけでなく、言葉にはならなかったが断ろうとしたことは、たぶんゾロもわかっていたことと同じでナミにもわかったことだろう。
それなのに、ナミは二人が両思いだ、と言う。

「どうしてそうなるのさ、俺はゾロのことは仲間として認めているけど、好き、とかそんな気持ちはないよ・・・。」

相手を落ち着かせるためにも、音量を下げて言う。
が、ナミはそれにふふん、と唇を緩めた。

「わかるわよ、あんた達を見てれば。サンジくんの気持ちも、見てればわかるわ。私を舐めないでくれる?」
「舐めないで・・・・って言われても、俺にはさっぱりわからないよ。っていうよりも、本当にゾロのことを好きとかじゃないから・・・。ゾロには俺からよく言っておくからさ!」
「サンジくん!」
「あのマリモは、ナミさんの素晴らしさを全然わかっていないんだ。もう一度ちゃんと話をしよう。そうすれば、ゾロだってわかるさ、ナミさんの良さが。あいつは、何か勘違いしてるんだ。だから・・・。」
「止めて!!」

声を荒げてナミはじっ、とサンジを見つめた。それはそれは、真剣に。笑顔の中にも瞳には新たな雫が零れ落ちるところだった。
ナミの涙を見て、サンジは、どう言葉を続けていいのかわからなくなる。

「ごめん・・・。」
「やさしいのね、サンジくん・・・。でも、私に優しくしないで!そんなこと言われると私が惨めだわ。」
「ごめん、ナミさん・・・。俺はただナミさんに幸せになってもらいたくて・・・。」
「サンジくんは、気が付いていないのね、自分の気持ちにさえ。知らないことが幸せな時もあるけど、だから許されるってわけじゃないわ。反って私には残酷よ!」
「ナミさん・・・。」

ナミの声が震えているのがサンジにはわかった。
それは、先ほどとは違う、怒りが篭っているように思われた。これ以上は何を言ってもナミの怒りを増やすことしかできないと判断された。
サンジはただただ眉を下げるしかできない。

「もういいわ・・・。」
「ナミさん。」
「サンジくんなんて大っ嫌い!!」

キッと睨みつけるとナミは椅子を倒す勢いで立ち上がる。そのまま足音荒く、ラウンジを後にした。
ひとり残されたサンジは、もはや何も、ナミの名前さえ呼ぶこともできなかった。






「本当に、俺、ゾロを好きなのか・・・。」




















ゆっくりと熟睡することもできずにラウンジで朝を迎えたサンジは、いつもと違って今日は遅いだろうと踏んでいたナミが予想外にもいつもと同じ早さで最初に起きてきたことに、多少ながらも驚いた。

コツコツといつもの調子でヒールの音を響かせて。
半分寝ぼけ眼の中にも驚きを隠せないサンジを前にして、ナミは言った。
あれからも部屋で泣いたのだろうか、赤い目をして瞼を腫らして。



「私、一晩考えたんだけど諦めない事にしたわ、ゾロのこと。だって、サンジくん、ゾロのこと好きって言わないんだもん。もっと自分の気持ちに正直になれば可愛げもあるけど、今のサンジくんの態度は貴方の好きな女の子を泣かすことしかできないわ。そんなサンジくんに何も遠慮する必要ないもんね。」

真っ直ぐにきっぱりと言われれば、サンジには「ハイ。」と答えるしかなくて。
ただただサンジはナミの言いなり状態になるしかなかった。


サンジだって一晩考えた。ナミと同じように、ナミに宣戦布告されるまでずっと考えた。

俺がゾロを好きだって、どうしていえるのだろうか。確かにいい仲間だと思うし、男として尊敬もしている。一緒に酒を飲むのも楽しい。
そして、最初はルフィかと思っていたゾロの思い人としてゾロと身体を寄せ合う自分を想像してみて・・・・・・、嫌悪感がわかなかった。
それに、やっぱりナミの言う通りで、傍目から見れば、ゾロのことを好きだとわかるほどの、様子をみせているのだろう。

やっぱり好きなのだろうか?


結局、断定形には出来なくて、疑問形のまま終わった。




船はいつもと変わりなく海を突き進んだ。






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06.08.12

夏休みだなぁ〜・・・。(意味不明)