過去と今と未来と3−11
「敵襲だぁ!!2時の方向に海賊船発見!!砲撃の準備してるぞ!!」 見張台の上からウソップの叫び声が船中に響き渡った。 「うそ!こんな時に・・・・。」 ナミが爪を噛む。が、避けようもない程に向こうの船は高速で近づいてきていた。 「しまった・・・。気づくのが遅かったわ!」 チョッパーとルフィはまだ寝ているのだ。 サンジはすでに起きていたが、戦闘にどれだけ参加できるのか、まだナミにはわからなかった。なんせ、サンジが船に戻ってきてから始めての戦闘なのだ。 島にいた時は、かなりの悪漢を倒したとは聞いているが、相手が海賊となれば、話は違うかもしれない。 ましてや、あれだけ騒ぎがあった後だ。体調もいいとは言えないだろう。 「ウソップ!舵をお願い。ロビンはウソップと変わって!ゾロ、JJ、相手をこの船に乗せないようにお願い。まだルフィとチョッパーが起きないのよ!サンジくんはラウンジ前で二人を守って!」 指示を飛ばしながら自らの武器を取り出し、手にするナミ。それぞれもナミの判断を的確と受け止め、誰も反論することなく、指定の場所で敵を迎え撃つべく準備をする。 敵船はメリー号の倍以上はあるがスピードもメリーよりもかなり速いようだった。気が付けば、敵の船はメリー号の直ぐ脇に並んでいた。敵船員が今にも乗り移るべく縄をそれぞれ手にしてニタニタしている。 「ウソップ!!」 「無理だ!向こうの方が船足が速ぇ!!」 バンと扉を開けて叫ぶ。 「全て乗り込む前に叩くのよ!」 ナミの叫びと同時にうおおおぉぉと雄たけびが届いた。 「来るぞ!」 ゾロがバンダナを頭に巻いて、船首にて仁王立ちする。 その様相は凄まじいもので、敵の誰もが一瞬怯む。と、その後で銃を構えている少年は小柄で、どうみてもただの飾りにしか見えなかった。 「こっちから攻め込め!!」 「チッ!!」 敵の言葉にJJが狙われているのがわかった。 ゾロがJJの前に飛び込む。 が、それも間に合わない。 「JJ!!」 ゾロの叫び声が敵の雄たけびの中に紛れていたが、JJにはすぐにゾロの声がわかる。 「大丈夫だよ!」 大きな返事と共に、パンパンと銃の音が埃の舞った空間に響き渡る。 一緒に人が倒れる音も届いてくる。 戦塵で見えなくてもJJがきちんとその役割を果たし、今は立派に麦わら海賊団の一人として戦っているのが空気でわかる。 横縁で二人のやりとりを遠く耳にして、ナミは一先ず内心安心する。 ただ問題なのはもう一人。 そう思いなおしてラウンジの方へ顔を向けた。 「サンジくんは・・・。」 顔を上げてさらに安堵する。 まったく心配はなかった。 彼の足技は健在だ。島での噂はウソではなかった。 敵を回りにして華麗に舞うサンジにナミは涙が出そうになった。まるで昔に返ったようだ。 これなら、中のチョッパーもルフィも大丈夫ね。 彼らの活躍のおかげで敵もあと僅か。 そう胸を撫で下ろした時、油断してしまった。 「きゃあっ!!」 いつの間にか背後を取られていたのだ。 気が付けば、大きな男がナミの体を持ち上げている。 その手は首に掛かっていて。 「ぐうっっ・・・。」 首が絞まってくる。 「ナミさんっっ!!」 サンジの叫び声がナミの耳に届く。 それに他の者も気が付いたようだ。一斉にナミを持ち上げている男を注目する。 「おっと・・・。動くなよ。このお嬢ちゃんがどうなってもいいのか?」 片手でナミを持ち上げる男はニタニタと笑い、ペロリと舌なめずりした。 「チクショウ・・・。」 サンジの呟きが聞こえたのか、男は威嚇の声を上げた。 「全員、武器を降ろせ。一歩も動くなよ・・・。」 ギロリと回りを一舐めする。 ナミとナミを抱える男をみんなで囲む。が、今はどうすることもできない。仕方なしにそれぞれの武器を足元に置いた。 能力によって体に手を咲かせるロビンに対しては、男が細い目で手を出すなと威嚇する。 それを察して、ロビンも微動だにしなかった。 それに調子を良くしたのか、男が仲間に向かって叫ぶ。 「おい!こいつらを縛れ!」 まだメリー号に乗り込んでいなかった新たな敵船員が縄を持ってメリー号に上がってきた。 「まずはこいつを縛れ。それから海楼石で出来たヤツを持ってこい。この女は能力者だ。」 どうやら男は敵船の船長のようだった。次々と指示を出していく。 顎で示されたゾロの元へ縄を持った下っ端らしき男が寄ってくる。 「ゾロ・・・。」 JJはただ心配そうに見守るしかない。 「うぅぅ・・・。」 ナミはまだ男に締め上げられたままだ。 ロビンはまっ先に海楼石でできているのだろう縄で縛られた。とたんに床に倒れこむ。 「ロビン!」 「動くな!!」 傍にいたウソップが慌てて駆け寄ろうとしたが、男の声で阻まれた。 「そういえば、この船には麦わらのマークが付いていたが、肝心の麦わらがいねぇなぁ〜〜〜〜〜。」 改めて船を見回す。が、マークの麦わらを被った男を見つけられなくて舌打する。 「どこだぁ〜〜〜〜〜。まさか、船長が真っ先に逃げたんじゃねぇだろうなぁ〜〜〜。」 勝手にそう判断し、笑い出す。がはははと笑い声までが船を占領した。 誰もが悔しさに歯軋りするが、まだルフィは起きないのだ。下手に口を開けない。 が、船内を探索されればすぐにでも船長の居場所はわかってしまうだろう。そして、そのまま起きることなく敵の手に落ちるだろう。 ルフィ・・・・。 誰もが心の中で彼を呼ぶが、彼がいるだろう部屋からの扉は開けられることはない。 それだけ、薬が効いているのだろう。この事態にも気づかないほどに。 「ゾロ・・・。」 そうしている間にもゾロにも縄が巻きつけられる。 と。 コトン・・・。 音がした。 「なんだぁ・・・・?」 男が音のしたらしき方向へ目を向ける。 と、そこにサンジが屈んでいた。 「おい、動くな!」 「あぁ・・・、悪ぃ。落としちまった・・・。」 が、サンジの言葉とは裏腹に、サンジが拾い上げようとしている場所には何も落ちていない。 「あぁ?」 誰もが不思議に思って見つめている。男も思わず「何だ?」と顔を向ける。 それに合わせるように、サンジはチラリと上目遣いに目を上げた。 その視線はゾロに向けられているのがわかったのは、麦わら海賊団のメンバーだけだろう。 「どうしたんだ、一体・・・。」 油断した、一瞬のできごとだった。 ふいをついてサンジがダッシュして床に落とされていた刀を蹴り上げる。その刀は予定通りにゾロの手元に飛び込んできた。 「な!!」 ゾロは、刀を振り上げた。 それも一瞬で、誰もがあっけに取られてその様を見つめている。 「クソッ!!」 咄嗟に気づき、男がナミの首を締め上げようとした瞬間。 今度は、男の腕が跳ね上がる。 バンッッ サンジが男の腕を蹴り上げた。 「うおっっ!!」 「きゃあぁっっ」 ナミは勢いで弾かれて宙に舞う。 その下では、驚きに目を見開く間もないスピードでゾロの体が男の懐に飛び込んできた。 ドサリ 男が床に倒れ付すと同時に、落ちてきたナミはサンジの腕に受け止められた。 「きゃっ。」 「ごめん・・・ナミさん。怖い思いさせちゃったね・・・。」 申し訳なさそうに眉毛を下げるサンジに。 「仕方ねぇだろう。元はといえば、自分が油断したからだ・・。」 冷たく言い放つが、その瞳は安堵していた。 が、一旦は緩んだ目も一瞬のことで、ギロリとまだ縄を持ったまま固まってしまった敵船員に向けられた。 敵は誰もが一瞬の出来事にぼおっと見惚れたままだ。 「まだ相手になるか?」 言葉は穏やかにも思えたが、その裏に潜む気迫がわからないほどではない。 全ての者が一斉に自船に逃げ帰った。 「おい、こいつも持っていけ!!」 ナミを床に降ろしたサンジは船長だった体を逃げ帰る連中の中に蹴り返した。 「よぉおし、俺様の指示通りによくやった。作戦Bは成功だ!」 「何言ってんの!あんたは何もしてないじゃない!!」 ウソップがいつものように自慢げに話している。 その横でナミがロビンの縄を解きながらウソップに怒っている。 全ての出来事にJJは、ただただ敵船員以上に見惚れるしかなかった。 あんなに息がぴったり合うなんて・・・・・・・ずるい。 JJにはどう言っていいのかわからない嫉妬が湧き上がった。 |
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2007.06.28.
話がちょっと戻ります・・・。(わかるかな〜〜〜〜。汗)