過去と今と未来と12




結局、サンジとゾロは、船に戻ることなく、そのまま宿で数日を過した。
2人で一緒に船番をしようと考えていたのだが、ロイのお節介のおかげで船は誰も近寄ることのない洞窟郡の傍に隠す事ができたため、それもなくなった。それ自体は感謝しなくてはいけないのだろうが、それでもゾロとサンジからすれば素直に喜べるものではなかった。


結局あの歓迎会と名うった宴会で、他のメンバーにロイとサンジの関係は知れ渡ることになってしまった。
幸いにも、宴会中のゾロの様子を多少不審がられはしたが、ゾロとサンジの関係にまで気が付いた者は船長しかいないかった。
いや、仕草や言葉の端から察するにロビンも何かしら感じているところがあるようだが、それは知っているというより、いわゆる女性のカンと言った方がいいのだろう接し方だった。ロビンからは何を言うでもなく、時折視線が合う程度だ。
ゾロもサンジもそんなロビンの様子に、「何か知っているのか?」と伺いたかったが、あえてそれは墓穴を掘ることにも繋がりかねないので、特にロビンから声が掛からない限りは、そっとしておく事にした。どんな関係を知られようともロビンは、自分からは仲間に対してそれを比喩したりはしないことは、想像に難くないのはわかっていた。


それよりも。
ただただロイの関わり方が鬱陶しいだけだった。

「もう、別れているじゃないか。」
「今更、ヨリを戻すつもりはない。」
「ゾロと恋人だ。」

何度も何度も断るが、それを聞き入れはしない。
人の話を聞いていないだけではなく、すでにロイの頭の中には、自分とサンジが恋人であるとインプットされてしまっているのかもしれない。
それでも、ロイは言葉をもってしてサンジに迫るのみでそれ以上のことはしなかったから、ゾロもサンジもただただ仲間に迷惑を掛けないように、ごく普通に過した。

もちろん、お互いの関係もロイの手前は恋人として接してはいるものの、島に着く前と変わらない状態を維持していた。
一度は身体を結んだ仲ではあるが、身体の関係だけが目的ではなく、お互いの心の結びつきを大事にしたいと思い始めたこともあり、まるで付き合い始めた恋人のように清い関係から初めて行こうと、言葉にはせずとも双方が思っていたことでもあったからに他ならなかった。
もちろんそれは男女の恋人同士でもあることなのだろうが・・・。

争いもなく、海軍や海賊の襲撃もない島での平安な日々は、2人にはそんな余裕を持たせてしまっていた。

ただ、最初の時のような濃密な時間はあえて取らなかったが、それでも時々、誰もいないところで、ゾロは強請るようにサンジにキスを求めた。
サンジも満更ではないようで、ゾロの求めに答えたが、それ以上のことは、許しはしなかった。というよりも、ゾロもそれを承知しているようで、敢えてそれ以上求めなかったのもあるだろう。
そんな初心な恋人同士かと思えば。
やはり本当は仲が悪かったのでは、と今までのようなライバル心剥き出しの頃を思わせるような激しいケンカもした。

それでも、2人とも、お互いの関係に満足していた。
欲を言えば、はっきりとした愛情を持って接していき、身体の関係を作りたいのもあったが、それでも、ずっとこんな関係で航海ができればいいとさえ思っていた。



















そして。

島に着いてから、3週間が経とうとしてた。

そろそろ、次の航海に向けての準備をしようと、少しずつだが、サンジが買い物を始めたのがきっかけだったのか・・・。
ゾロとサンジだけでなく、麦わら海賊団にとって、そして、この島で出会っただけのほんのちょっとの間の関係と思われたロイとJJの運命も大きく変わることになった。










ドンドンとドアを叩く音でゾロは目が覚めた。

「・・・・・あぁっ!誰だ、こんな朝早くから!」

珍しく、いつもならサンジの蹴りでしか起きないゾロが、ドアごしに聞こえてくる自分の名前に気が付いた。

のっそりと起き上がると、ふ、といつもなら先に起きてドアを開けてくれそうな、目覚めのよい、コックがいない。
カーテンの隙間から覗く光はまだ、朝日が地平線を越えていないのを知らせていた。

「まったく・・・。」

何処に行ったのかわらかないまでも朝の早いコックには慣れているので、ゾロは頭をボリボリ掻いて、欠伸を噛み殺した。

のっそりと動いて、漸く焦りを見せる呼び声に近寄る。

「どうしたんだよ・・・・、こんな朝早くから・・・。」

ギイッと立てる音にはそれなりに隣で寝ている連中を気にしながらも、急いでいるのを隠さない。

「サンジ・・・・さんは?彼はいますか!!」

青ざめた顔色をした、最初にこの島に着いたころより幾分か痩せてしまった少年の域を抜けない金髪に、ゾロは眉を上げる。

「あぁ?・・・あ〜〜いないようだが、いつものことだろう?どうせ朝市にでも行ってるんだろう?昨日から、出港の準備で買出し始めるって言ってたから・・・。」

いつものことだろう現状に、刺のある視線を寄越してゾロはぶっきらぼうに呟いた。

「違うんです!!いなくなっちゃったんです!!ふたりとも!!!」

「何言ってんだ、JJ。2人って・・・?」


「ロイとサンジさんがいなくなっちゃったんです!!!!」






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漸く、進展?

2006.06.12.