膿 ー14ー
若林は岬の腕を取り、ベッドへと歩き出そうとした。 それに咄嗟に岬は反応した。 バシッ! 腕を解くのがあまりに乱暴だった為に岬が若林の腕を叩いた形になった。 「ミサキッ!」 キッと睨みつける岬は顔を真っ赤にしてワナワナと震えている。怒りの為に声も出ないようだ。 「岬・・・・・。」 再度、伸ばそうとした若林の手を今度は意思を持って叩いた。 「何を考えているんだ、キミはっ!どうかしてるんじゃないの!!冗談で僕をバカにするのはやめてくれないか。僕が・・・、僕がどんな気持ちでこんなことをしているか、知らないくせにっ!『抱く』なんてっ!そんな簡単に言わないでよっ!!」 ハァハァと肩で息をする岬は、捲し立てた。 岬が怒るのは、もっともかもしれない。 が、若林は冗談でもないし、咄嗟に出た言葉とはいえ本気であることには間違いないと自信を持って言った言葉だった。 しかし、それが岬には伝わらない。 どうしたら岬に若林の本気が伝わるのか・・・。 思案に暮れる若林を、岬は自分の間違いを認めた為の沈黙と解釈した。 さっと、踵を返すと早足でドアへ向かった。 「待てッ、岬っっ!」 もう一度手を伸ばすが、わずかのところで空をきり、若林は勢いよろけた。 それに気づかないのか、目もくれず、岬は部屋を出て行った。 パタン 勢いよく開くドアも機能が静かに作られているせいか、閉まる時はとても静かにドアは閉まった。 ゆっくりと閉まるドアの向うに岬の影をもはや見ることもなく、若林は立ち尽くした。 行っちまった・・・・。 岬の様子に、明日の朝まで帰って来ないだろうことが予想できた。もしかすると朝食にレストランで漸く顔をあわすぐらいで終わってしまうかもしれない。 軽く舌打ちすると、若林はベッドにどかりと座った。 今更追いかけたところで部屋番号はわからない。最上階とはいえ、一部屋しかないわけではないのだ。それ専用とは言っていたが、もしかすると一般客もいないとは限らない。大声で怒鳴りながら岬のいる部屋を探すわけにもいかない。 「チクショウ・・・・・・。」 誰に対するものかわからないまま怒りがフツフツと湧いてくる。 これは、一体何だ? 岬に対する嫌悪だってまだ、綺麗に消え去った訳ではない。まだまだ岬のことを見たくないとさえ思う自分も存在するのは確かだ。 しかし話し合いをしたいと思った時に感じた、岬をどうにかして助けたい。また、今のような苦しいサッカーではなく、一緒に笑顔でもってサッカーをしたいと心配の気持ちも本当だ。 だが、咄嗟に出たとはいえ、「岬を抱く。」と言ったのだ。しかも、本気だった。好きとか、愛している、といった女性に対する思いはあるはずがないのに、『岬を抱く』と。 それは、一体どういう感情でもって言ったのかが、自分でもっわからないが、それでも本気だった。冗談では決してないと若林は思う。 本気といってもそう簡単に同性である仲間を心配だからと抱けるものなのか? じゃあそれは、好奇心からだろうか・・・。 あの・・・。どこの誰かわからない奴との情事の岬の声を聞いた、あの晩が思い出された。 もしかして、あの岬の声が忘れられないから「岬を抱きたい。」と思ったのだろうか。「岬を抱いたら」どんな声で啼いてくれるのか、この耳で聞きたいからなのだろうか。 本当にただの心配から?それとも、好奇心?もしかして、岬に欲情しているのか? ガリガリと頭を掻く。 「本当に心配や好奇心だけで抱けるのか?仲間を・・・!!」 そう呟いて己の股間を見る。 気が付けば、それは己の言葉を代弁しているように隆起していた。 わかっているのだ、身体は。身体は正直だとはよく言ったものだ。 欲情しているのだ。岬に。 「クソッ!!救えねぇ!!」 自覚したとたん、新たに岬の痴態が脳裏に過ぎる。実際に見たわけではないのに、あの晩の宿舎に帰宅した後同様、鮮明に浮かび上がる。 自分に抱かれて喜んでいる岬。上り詰めて霰もない姿を曝す岬。 自分もそれ以上に興奮して、岬を穿つ。 もはや戻れないまでに膨らんでしまったジャージに手を掛ける。 ごそりと己の砲身を引き出し、手を廻す。止まらなかった。 これで二度目だ。今さらだ。 そう開き直って、若林は脳内の岬を抱きしめた。 岬もやはり若林の予想通り、朝食まで帰らなかった。 そして次の日、メンバーは皆それぞれの所属チームへと戻った。 |
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短っ?しかも期待はずれでごめんなさい。(土下座)
2005.11.29