ー23ー




力づくではあるが、若林から伺い知れる表情は先に見せた悪鬼のようではなく、瞳の中には炎が見えたがその中にも温かみを感じ取れるほどに優しさも含まれていた。

観念したのか、岬は体中の力を抜き、握っていた拳を緩めた。

「岬・・・。」
「絶対後悔するから・・・・。」

若林が名前を呼ぶと、ポツリと岬は溢した。

「しないさ・・・・。でも・・・。」

若林は軽く笑うと岬にキスを送る。

「後悔するとしたら、お前を無理矢理抱いてしまうことだろうな・・・。だから、俺を拒否しないでくれ・・・・・・な。」

ゆっくりと髪を梳かして笑みを向ける若林に、岬は無理して笑みを返す。

「う・・・・ん。」

コクリと頷くと、今度は岬から乗り出し、唇を重ねた。
少し伸びをして合わせた唇は散々泣いたからか、しょっぱい味がして、若林はその奥にあるはずの甘さを求めて舌を差し入れた。

「・・・・・・んんっ。」

チロチロと入ってきた舌に、あげようとした声を吸い取られる。
深く深く合わさる唇に、岬は今更ながらに思い返す。

仕事として行ってきたセックスでは岬はこんなキスをしたことがなかった。
よく身体は売っても心は・・・、とキスをしない娼婦の話は耳にしたことがあるが、自分もそうだったのかな、と疑問に思った。
別に誰に操を立てるわけでも、心だけは・・・、というわけもはない。求められればキスだってそれなりにしたはずだが、ただただセックスの最中はキスそのものを相手から求められた事がなかっただけだと気づく。
男の尻に自分の性器を挿入するぐらいだからキスぐらい気持ち悪いものではないはずだがと思うのだが。それでもやはり男にキスをするのは憚られたのか、それとも、当然といえば当然だが快楽を求めるのに必要ない行為だからか、やっている間は誰ともキスとしたことはなかった。
セックスをしていない時ですら、軽い挨拶程度のものしかしたことがない。最初、若林にばれた時も口止め料としては軽くしているが。

若林は自分のことを思い人だと言った。
好きな人とキスもしたことがないのに請われるままに男に身体を開く、こんな汚れた自分のことを好きだというのだ。
だからなのか・・・。
こんな・・・・・・こんな深い思いのこもったキスはしたことがなかった。
岬は若林のキスに酔った。


あぁ、キスがこんなに気持ちのいいものだなんて。
キスだけで、舌をほんの絡めただけでイきそうだった。
あれだけ拒否していたのに、それでも触れてくる手に岬は知らない振りをしてたが、実は勃っていた。
いつもいつも吐きそうになるのを耐えて、ただただ行為に集中していただけなのに。
それなのに、この触れるだけで襲ってくる快感は一体何なのか。

ただ単に若林を仲間として巻き込みたくないというだけではなく、若林同様に自分もこの逞しい心と身体を持ち合わせる日本のGKに惚れているのだろうか。
明確な答えをはじき出す前に、岬は若林の手に翻弄された。



「あああぁっっっ!!」

ペロリと乳首を軽く舐められただけで、嬌声が上がる。
声を噛み締める事もできず、若林にされるがまま声が喉から迸った。

「やあぁぁんんっっ!!」

片方の乳首を舐めながら、いつの間にか、GKの大きな手は、岬の秘部へと伸ばされていた。
ツプリ、と爪の感触が冷たく感じた。
ビクンと岬の身体が跳ね上がる。

「岬・・・・・。俺は男抱くの初めてだから・・・・・、痛かったら言えよ。」

声を出して返事をしようにも、それらは全てあられもない上擦った声にしかならない為、首をコクコクと縦に振って答えるしかなかった。

若林の興奮もかなり昂っているのか、ハァハァと息が荒い。
本来なら若林の言葉通り、岬の方が慣れているので、岬が率先して動けばいいのだろうが、岬の方も自分でも驚くほどに余裕がなかった。
お互いに先へ先へと急くように身体を絡める。
気が付けば、最初遠慮がちに進入してきた指はいつの間にか3本に増え、奥底まで侵入して岬の中を掻きまわした。
女性のようには濡れないはずのそこが、溢れ落ちてきた岬から出てきた汁により嬌声と交わって音を奏で、車内を淫靡な世界へと誘う。

「ああんっっ・・・・!!はああっっんん!!」

ピクピクと爪先が痙攣を起こす。
若林の空いた方の手は、身体の中を暴れている指とは反対に撓った脚を穏やかに撫で摩る。

「わかばやし・・・・・くんっっ・・・!!もうっ!!・・・・・もうっっ、お願いっっ!!」

仕事柄容易く柔らかくなったそこは、今すぐにでも、と若林を求めヒクヒクと蠢いている。
岬の声に煽られて、若林もかなりキているようだった。
ゴソゴソとジッパーを下げて己の逸物を取り出す。
そこは限界寸前まで勃ち上がり、先に感じる快楽を想って汁を垂らしていた。
岬は目を見張った。
こんな大きくて硬いものは、初めてではないか、と思う。
大抵の相手は、おじいさんと言っても過言ではない、またはおじさん、と言った所謂中高年年代が多かったのだ。
自分と同世代の元気なヤりたい盛りの若い年代は相手をしたことがない。いや、それだけではく、実際に同年代と寝たとしても、これだけのものはまずはお目にかかれないだろう。
ゴクリと唾を飲み込んだ。
これだけの凶器に恐れ慄くとともに歓喜に打ち震える。
若林によってどれだけの快感が得られるだろう。どれだけ悦べるだろう。
岬はそっと若林の分身に手を伸ばした。
下から撫で上げ、先端から溢れる汁を指先を使って全体に広げる。岬が触れてからまた一層大きくなったペニスに岬の手ごと若林は手にした。

「いいか・・・・・、入れて。」

やはり岬は声に出さず、コクンと首を縦に振るだけだったが、ただ単なる合意というだけでなく、自分と繋がることに悦びを感じていることを岬の表情から読み取ることができた。
若林は嬉しさの余り、唇を再度合わせた。
深い深い口付けをしたまま、身体を推し進める。

ググッ

先端が押し込まれて、一瞬岬の身体が強張った。
察知して若林が身体を離す。
若林の気遣いに、岬は目を細めて笑った。

「大丈夫だから・・・・。若林くん・・・・・、君を感じさせて・・・・・、・・・・ね?」

若林の頬を下から撫でて笑う岬の顔は、可愛らしさの中にも怪しげな艶を醸し出している。

同じ客が度々岬を指名するとは聞いていたが、彼らは皆、この妖艶な微笑みにやられているのだろうか?
いや、岬だって、望んでのことではないんだ、仕方がないんだ。
これからは俺だけのものにすればいいんだ。

わかってはいるものの、若林の中に新たに嫉妬の影が浮かび上がる。

「ああああぁぁぁあっっっ!!!!」

岬の言葉に助けられたのもあり、若林は半ば強引に中に押し入る。
あまりの締め付けに若林も声が上がる。が、こんな快感は初めてだった。
とても仕事として行っているとは思えないほどに締め付けがいい。
男性なのに、いや、男性だからだろうか。それとも、岬だからか。理由はわからないが、今まで感じたことのない感触を味わう。すぐにでもイきそうだった。それをなんとか下腹に力を入れて耐える。
岬も若林の極太に快感を見出したのか、今まで以上に声を張り上げ、背を撓らせて振るえている。
溢れている涙は、抱き合う前とは違うものだということは、若林にもわかるほどに岬は歓喜の声を上げた。
痙攣を起こしている爪先は天井に付くほどに拡げられ、指先は痕がつくほど力を込めて、若林の肩に掴まっていた。

「ああぁぁぁっっ・・・・!はあああんんっっ!!・・・・わかばやし・・・・くんっっ!!!」

岬の声に煽られて、若林は岬を揺さぶった。
若林の動きに併せてユラユラと車まで揺れる。傍から見れば、中を覗かなくても中で何が行われているのか一目瞭然というほどに車を、岬を揺さぶった。

サッカーをしているあの真剣な眼とはまるで別人の岬の瞳から目が離せない。
芸術ともいえるボール捌きをする脚は、艶を持って若林を縛るように絡みついている。風に靡いて爽やかな髪は、汗を飛ばして卑猥な匂いを醸し出している。
言葉で約束をしなくとも、もはや岬に囚われて二度と手放せなくなるほどに、若林は岬に囚われた。

「みさきっっ!・・・・・みさ・・・・・きっ!!」
「わかばやしくんっ!・・・・わか・・・・ばやし・・・・くぅんっっ!!」

お互いの名前を何度も何度も呼び合い、求め合い、絡み合い。
岬の足首をグイと、これでもかと拡げて動きを早めた。

ビクビクッと岬が痙攣を起こして撓ると若林は己の腹に温かい飛沫を受け取り、そのまま今度は岬の奥底に自分の白濁を叩きつけた。



やはり辺りは暗いままの時間帯は、車内の濃厚な熱で満たされていた。






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散々お待たせしてこれだけとは・・・。(滝汗)要修行・・・。

2006.09.08.