過去と今と未来と3−32




あれから更に一週間が経ち、とある島に着いた。活気があるわりに人々はのんびりしていて、穏やかな島だった。
島での行動は、いつもと変わらなかった。


いつものように買出しをし、騒ぎを起こして島を逃げ回り、船を別の場所に隠しなおし。
ログが溜まるのを静かに待っていた。




そしてログが溜まるというその日。

JJは、島での最後の夕食の時間にみんなにとうとう告げた。




「僕、この島に残るよ。」

ゴクン

と食事が喉を通る音が響いた。それはルフィのものだっただろうか。
誰もが驚く中、サンジとゾロは何も言わず、静かに聞いていた。

「どうして、JJ?サンジくんとの仲も良くなってきたし、ロイの誤解も解けて漸くこの船の雰囲気が良くなってきたのに・・・・。何があったの?またケンカしたの?誰と?相手はサンジくん?それとも、ゾロにもう愛想が尽きたの?」

けたたましく質問攻撃をするナミも、最初の頃はサンジの肩を持つような発言ばかりだったのが、今はすっかりとJJとも打ち解けてきたのだ。だからこそ、どうして、と納得できない様子だ。

「ん〜〜。なんかわかっちゃったんだよね。いろいろと・・・。」
「いろいろと?」

ウソップとチョッパーが首を捻る。

「ゾロとサンジの仲には割り込めないってこととか・・・・、サンジの誰でも庇うバカな行動を止められるのはきっとゾロしかいないだろうな・・・とか。この船にいると僕が目標とするものになれないとか・・・。」

つらつらと並べ立てる内容に誰もがわけがわからない、という顔をする。

「兎も角!僕は海じゃなくて陸で一流の料理人を目指すことを決めたんだ。だから、この船を降りることが僕にとっていいことがわかったんだよ。だからだよ!そして、僕はゾロ以上の男を見つけるんだ。」
「はぁ・・・・・。」

明るい顔で力説するJJに思わず脱力するメンバー。
それを見て、ルフィがニカリと笑って「そうか。」と答えた。

「JJが考えて出した答えなら仕方ねぇ。すげぇ寂しいけど、・・・・すげぇ寂しいけど・・・・すげぇ寂しいけど・・・。」

そこから先に言葉が進まない船長に、ナミが「はいはい、あんたも寂しいのね。」と慰めた。
様々なことはあったが、彼もまた仲間の一人なのだ。
サンジもゾロもJJの話には割り込まなかった。ただ黙って彼の話を聞いていた。


それから船長がお別れパーティだ!!と言い出してなんとか盛り上がり、さよならパーティーへと夕食が変わるのは早かった。





















「本当にいいのか?まだ今なら大丈夫だぞ、船に乗れるぞ!」
「もうっ、ルフィ。いい加減にして!!」

ナミに頬を抓られ顔を曲げる船長にJJは笑う。

「大丈夫だよ。ちゃんと就職先も見つけてあるから。この島に降りて一日目に入ったレストラン。あそこの料理長が良い人でね。住み込みで働くのをOKしてくれたんだ。そこが僕の今度の修行の場だよ。それに・・・・料理長、格好いいしねvv」
「おい。そこかよ!!」

思わずウソップの突っ込みが入る。

「きちんと考えて決めたんだ。僕は、ロイにも・・・サンジにも負けない料理人になるから!だから、またグランドラインを一周したらこの島に寄ってくれよ!」

挑発するように目を上げて言うJJに、サンジもふっと笑う。

「何言ってんだ。海のコックには勝てねぇよ。」

お互いに睨み合い、そして笑いあった。

「サンジ、いろいろとありがとう。サンジのことも大好きだったよ。」
「過去形かよ。」

今はもう笑顔を向け合うことができる。それが何より嬉しかった。

「ゾロ。ありがとう。ゾロがいてくれたから、僕はここに来ることができたんだ。愛してるよ。」

チュッと頬にキスを送ると回りから口笛が吹かれた。が、これも最後だ。

そしてナミにもロビンにも抱擁を。ウソップとチョッパーには握手を。

「船長。本当にありがとう。お陰で僕は立ち直れたよ。」
「俺は何もしちゃいねぇよ。自分で立ち直ったんだろ?」

ニシシシと笑うその笑顔は太陽そのものだった。

「本当にありがとう、みんな!!」











海岸に降りて大きく手を振るJJを後に、メリー号は次の島を目指して出航した。
























後甲板で煙草を吹かして海を見つめる男の耳に、聞きなれた足音がドカドカと届いた。

「何だよ?クソ剣士・・・。」

後ろを振り返らずにきつい口調で募る男にゾロは苦笑する。

「あのよ、JJとも約束したんだがよ。いや、JJとの約束がなかったとしても言いたいことがあるんだ・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・・サンジ・・・・。」

名前を呼ばれて思わず振り返った。

「あいつ曰く、俺達は恋人とかを飛び越えた仲らしい。それによ、お前のバカな行動を止めるのはどうやら俺が適任らしい。」
「確かに、最後の夕食で言ってたな・・・・・・・でも。」
「意味、わかるだろう?」
「う・・・。」

正面を向いて見つめてくる男に、思わずサンジは唸って下を向いた。

「JJには意地を張ったらしいが、今はそれはナジだ。無理に意地を張ったら、俺は実力行使に出るぞ!!」
「・・・・・・・・っっ・・・。」
「だから素直に返事をしろ。」




ゾロはコホンと咳払いを一つした。




「最初は仮初の恋人で、そしてJJには恋人以上って言われた・・・でも、俺達ぁ、本当には確固たる関係をまだ築けちゃいねぇと思うんだ・・・。最終的には、どんな名前の関係になるかわからねぇが、今はお前ときちんとした関係を築いていきてぇ・・・。」
「ゾロ・・・・。」
「俺は、お前の傍にいたいと思うし、辛いときにはお前を支えてやりたいと思う。それに、お前を抱きたいと思う気持ちもあるんだ。だから・・・・・今度は、今度こそはちゃんとした恋人同士ってやつをやってみないか?俺達・・・・・。」
「バカ・・・・。」
「それで、俺達は一緒に前に進んで行こう。一緒に進めなかった連中の分まで・・・。」
「あぁ・・・・。」







ゾロはサンジの腕を取り、強く引き寄せた。
サンジはされるがままゾロを見つめた。
ゾロはゆっくりと顔を近づけ・・・。

久し振りに交わした口づけは煙草の味がした。






END




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2008.08.07.





こんな話に最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。